日本財団 図書館


慧眼のフェスティバル

大笹吉雄 OZASA YOSHIO(演劇評論家)

006-1.gif

NHKの名古屋局を中心に、1995年以来「アクターズ・フェスティバル・イン・ナゴヤ」と題する一人芝居のフェスティバルが冬に名古屋で開催されていて、劇作家の清水邦夫氏とともに、準備段階からその芸術顧問を務めている。これまで三回のフェスティバルを行ってきたが、今年は全体の構想を見直すことを含めて、一休みすることが決まっている。だからということもあって、現代演劇協会が昨年からはじめた一人芝居の国際フェスティバルには、人一倍の関心がある。

この名古屋での一人芝居のフェスティバルは、二回目から主催者の招待公演と、コンテスト形式による公募の公演が組み合わされることになり、期間中に7、 8本の一人芝居が上演される。が、いざとなって驚いたのは、公募に応じてくれた舞台の数である。一昨年が160本、昨年が70本に及んだのだ。これを5本の参加作品にしぼるのが大変な作業で、選考委員は文字通り嬉しい悲鳴をあげたと聞いた。

この経験から改めて知らされたのは、一人芝居が予想以上に広い範囲で上演され、楽しまれているという事実だった。一昔前にはおよそ考えられなかったことではないか。

そういう中に登場したのが、一人芝居の国際演劇祭である。実は名古屋でのフェスティバルでも、この側面が考慮されなかったわけではなく、第一回時にはロベール・ルパージュを招聘した。が、もろもろの事情でこれ切りになっているし、ルパージュの舞台にしても多くの中の1本だから、国際フェスティバルというには遠い。だから現代演劇協会の試みは、いささかの経験のある身には、やられたという観がすると同時に、羨ましくも感じるのである。

それにしてもと思うのは、この一人芝居の国際演劇祭が、いろいろな点でよく目が届いているということである。「家族」というテーマの選び方も、世界中でそれが問題になっている現状からして時宜を得たものだといっていいが、それにも増して感心するのは、国際フェスティバルとしての組み合わせである。第一回が日本、韓国、米国、中国という選択で、しかも日本は沖縄芝居実験劇場が代表していた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION