(1) 社会保障制度に基づく個人コード
先進国を中心に多くの国々で社会保障制度に基づく個人コードが存在しているが、一個人に対して年金番号等の複数のコードが存在しており、統一の個人コードが利用される例はそれほど多くない。
しかし、1936年にアメリカが導入した社会保障番号、及び1964年にカナダが導入した社会保険番号は、もともとは社会保障制度に基づいて導入された個人コードであったが、社会保障制度を超えた幅広い行政サービス分野及び民間企業において利用されるようになっており、全国民を対象とした事実上の統一個人コードとなっている。
また、イギリスの個人コードである国民保険番号は、現時点では、社会保障制度を超えて利用されることはないが、イギリスの社会保障制度は他国の制度に比して広範囲であるため、国民保険番号を統一個人コードの最有力候補と見なすことができる。
(2) 住民登録制度に基づく個人コード
住民登録制度を背景とした個人コードの導入例は多い。欧州では、1941年にフランス、1944年にスペイン、1968年にデンマークとスウェーデン、1970年にノルウェーが導入した。アジア諸国では、1948年にシンガポール、1962年に韓国が導入している。
住民登録制度に基づいて導入された個人コードは、行政サービス分野及び民間企業においても幅広く利用されており、全国民を対象とした事実上の統一個人コードとなっているものが多い。
(3) 納税制度に基づく個人コード
納税制度を背景とする個人コードの導入例としては、1970年導入のイタリア、及び1989年導入のオーストラリアがある。
これらの国では、納税制度に基づいた個人コードが導入されたが、税務以外の行政サービス分野において利用される場合もある。社会保障制度や住民登録制度を背景として導入された他国の事例と比較すると、民間企業等における利用規制が強いこともあり、事実上の統一個人コードとならない場合が多い。