1-2 統一個人コードに対する世論の動向
昭和40年代に検討された事務処理用統一個人コードが、世論の賛成を得られず、調査研究自体を中止した経緯があることは既述のとおりであるが、今後、統一個人コードの導入の検討おいて、この世論の趨勢は十分、留意されなければならない事項であることは間違いない。
当時、統一個人コードの調査研究を中止する際の福田赴夫行政管理庁長官の声明である、「世の趨勢と国民のコンセンサス」について、その後の状況、動向を見ておく必要があろう。
1-2-1 世の趨勢
当時の状況と異なる世の趨勢として、情報通信ネットワーク技術の進歩・普及と、個人情報保護対策の進展の2点が挙げられよう。この2つの新しい動向は統一個人コードの導入にプラスの要因となっていると考えられる。
(1) 情報通信ネットワーク技術の進歩と普及
当時、各省庁における情報化は一部の業務処理に限定されており、オンライン・システムも極めて限られており、特定のアプリケーションにとどまっていた。その後の情報技術の進歩でもっとも大きいのはネットワークの普及であろう。最近のパソコンの普及(平成9年度現在で約1.5人に1台)、省庁内LANの構築(本省庁部局のLAN構築は、25省庁中24省庁)、外部とのネットワーク構築の容易さ、民間商用ネットワークの普及、インターネット等国際的なネットワークの進展等は、情報通信ネットワーク環境に大きな変化・発展をもたらしている。
このような情報通信ネットワークの発展・普及は、各省庁におけるオンライン・アプリケーションの増加をもたらし、そのことが国民側にとっては行政サービスの質の向上への期待となっている。また、当時、懸念されたネットワークによるデータ伝送上の不安定さや漏洩等の問題も、セキュリティ技術が進み、データやネットワークの安全性も高まってきているといえよう。以上のことは、厳密な手続や個人情報の保護を旨とする行政運営におけるネットワーク技術の活用の可能性を高め、適用の拡張に貢献している。