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飛翔は7月23日から8月12日までに、のべ34回観察されたが、これは実験に用いた44個体のうちオス4個体、メス1個体、計5個体のみで認められた。しかも、実験の後半では2週間ごとに給餌した区とえさなし区では飛翔が見られなくなったため、餌条件3〜4日と1週間の両区の個体の飛翔が85%以上を占めた。

7〜8月の実験に用いた個体のうち、飛翔を行ったものを10月まで同じ条件で継続飼育したが、その後は飛翔行動は認められなかった。しかし、飛翔筋は、2週間と無給餌の実験区の飛翔個体では少し溶解が始まっていたものの、3〜4日と1週間の実験区で飛翔した個体ではグレード?Vの状態であった。これらの個体は翌年に飛翔する可能性がある(図16)。

一方、10月の実験では、飛翔は10月1日から10月23日までの間に述べ30回観察されたが、これは実験に用いた44個体中のオス3個体、メス5個体、計8個体のみで認められた。10月の実験では、餌条件2週間と無給餌区の両区の個体の飛翔が70%を占めたが、これは水温の低下などにより、代謝レベルが低下し、餌条件の悪い区でも飛翔のためのエネルギーが温存されたためではないかと考えられた。実験終了後に解剖すると、飛翔可能な飛翔筋(グレード?V)をもつ個体は、飛翔が確認された8個体のみであった(図17)。10月の実験においても一部の個体でしか飛翔が認められなかったことは注目に値する。

 

3. 体重変化と求愛行動

 

1997年8月21日から9月25日までの間、飛翔実験に用いた成虫の体重変化を調べた結果、無給餌区では体重が少しずつ減少したが、他の区では、最初はやや減少するものの、一定のレベルを維持することが明らかになった。また、各給餌区の求愛行動を見ると、実験期間の後半は繁殖活動の終了時期と重なったためか、すべてのオスで求愛行動は認められなくなったが、3〜4日ごとの給餌区と1週間ごとの給餌区では、繁殖期間中、ほぼ毎日、オスは日中さかんに求愛行動を行うのが観察された(図18)。これに対して、無給餌区と2週間ごとの給餌区では、実験開始直後に求愛行動が見られなくなり、成虫の活動性の著しい低下が起こったと考えられた。実験終了後にすべての個体を解剖した結果、餌条件が悪い区の成虫では、飛翔筋のグレードが低かった。

これらのことから、本種は食物が得られる頻度が減少すると活動レベルを低下させ、飛翔筋を溶解させて代謝エネルギーに変えていることが示唆された。したがって、

 

 

 

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