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第2節 コオイムシの飛翔行動の観察

 

水生半翅類の飛翔の時期や時間帯などについては、いくらかの種で観察記録があり、ミズカマキリやタイコウチは夏期に、昼夜いずれにも飛翔が目撃されている(日比,1996)。コオイムシ科では、タガメが繁殖相手を求めて夜間に飛翔し、時には灯火に集まることが知られており、タイワンタガメLethocerus indicusでは雨季における夜間の飛翔が灯火採集により確認されている(市川,1995;橋爪,1995)。一方、コオイムシとオオコオイムシの飛翔記録は日中にそれぞれ、2例、1例があるのみである(表4,図11)。そこで、本研究では、コオイムシの飛翔能力、および飛翔時期と時間帯を明らかにする室内実験を行なった。

 

材料と方法

 

1. 飛翔実験

 

コオイムシの飛翔実験は1996年6月から1997年11月に大阪府立大学農学部において行ったが、1996年6月から1997年6月まで(実験1)は但馬池で採集した成虫を、1997年7月から11月にかけて(実験2)は兵庫県稲美町の梶ヶ池と大沢池で採集した成虫を、それぞれ実験材料として用いた。水を張った直径15cm、高さ8cmのガラス容器に野外で採集した成虫を、実験1では雌雄別に10個体ずつ、実験2では雌雄各10個体ずつ入れ、飛び立ちの足場として直径5〜7cm、高さ10cmの木の棒を入れ、準野外条件下においた大型の水槽に入れた。また、水槽には十分に日光が入射し、なおかつ本種が飛翔して逃げないように、厚さ1.5mmのアクリル板でふたをした。このシリーズの実験では、コオイムシがガラス容器の壁をよじ登ることができないので、容器内から飛び出した個体を飛翔個体として記録した(図12)。

 

2. 飛翔の要因と行動の解析

 

実験2では餌条件が飛翔行動に及ぼす影響を明らかにするために、給餌頻度の異なる区を設定して実験を行った。1997年7月14日、8月13日、9月23日に兵庫県稲美町で採集した雌雄各25個体のうち、雌雄各5個体を採集当日に飛翔筋の状態を調べるために解剖し、残りの個体を雌雄各5個体ずつ4群に分け、それぞれのグループ

 

 

 

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