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結果と考察

 

1. 侵入経路

 

1996年6月23日から1997年12月31日までの調査期間中に、新たに造成したため池内で13種の水生半翅類が確認された(図9)。このうち、ため池造成時にすでに見られたヒメアメンボとマツモムシ以外の11種は、外部から侵入してきたと考えられた。このため池の周辺でも確認された水生半翅類はこの11種のうち6種であり、シマアメンボ、ヤスマツアメンボの2種はため池に流れ込む水路中で、コミズムシ、イトアメンボ、タイコウチLaccotrephes japonensisの3種は水田が営まれていた時の上から2〜7枚目の棚田で、コオイムシは下部3枚の湿地状の休耕田のうち最も水量の多い下から3枚目で、それぞれ確認された。残りの5種は、ため池の周辺では見られなかった。これらの種の新たに造成したため池への侵入の方法は、水路にいたシマアメンボとヤスマツアメンボの2種を除いては、成虫の飛翔によるものと考えられた。

侵入の時期については、水路でみられたヤスマツアメンボは1996年6月にため池で確認されたが、飛翔能力をもたず流水を好むシマアメンボは1997年8月と造成後遅くに侵入した。水田で確認されたコミズムシ、イトアメンボ、タイコウチは1996年8月までに、その下にある湿地に生息していたコオイムシは1996年10月に、ため池への侵入が確認された。棚田とその周辺では一度も目撃されなかった種では、ミズカマキリやヒメミズカマキリは1996年10月までにため池に侵入したが、アメンボ、オオアメンボ、マルミズムシParaplea japonicaなどの種は1997年の春以降とやや遅れて侵入したのが確認された。

 

2. ため池内での季節消長

 

ため池に侵入した13種の水生半翅類のうち、7種では、その後幼虫がため池内で見られ、繁殖が行われたことが確認された。このうち個体数の多かった5種の季節消長についてみると、マツモムシは、ため池造成時から調査期間を通して絶えず見られ、幼虫も同じくため池内で見られたことから、本種はため池内で繁殖、越冬を行なっているものと考えられた。ヒメアメンボは、3月中旬に成虫が出現し、4月下旬から8月中旬までの間ため池内で幼虫が見られたが、9月中旬以降は確認できなくなった。このアメンボは、繁殖はため池内で行なうが、越冬のために、秋にた

 

 

 

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