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第3章 水生半翅類の生活史と移動

 

第1節 野外における水生半翅類の生活史

 

水生半翅類の分散の研究については、アメンボが越冬を陸上で行ない、陸上の越冬場所と池沼との間の移動のために、秋季に飛翔筋の発達した「長翅型」が生じること(Harada,1992)、さらに移動中の行動として、長日条件では光の方向に、短日条件では光とは逆の方向に体を向けること(Harada,1993)などが知られている。また、ヒメアメンボでは、上陸して土中で越冬することが確認されている(島野,1997)。イスラエルの砂漠の中にあるオアシスに生息するマツモムシの一種Notonecta maculataでは、水を求めて飛翔移動し、人工的に造った水たまりにも飛来したことが知られており(Blaustein,1995)、日本産のミズカマキリR. chinensisでは、市街地にある学校のプールへの秋口の飛来(桂,1993)や、冬期に貯水槽で集中して発生したことが報告されている(橋爪,1987)。

水生昆虫のためのビオトープを造成した場合、どのような立地条件が必要かを検討するうえで生活史と移動の研究は不可欠である。しかし、水生昆虫の移動経路やため池での繁殖行動などにはまだ不明な点が多い。そこで、今回新たに造成したため池において、特に水生半翅類を対象として侵入する時期やその後の発生経過を調べた。

 

調査方法

 

調査は、大阪府豊能郡豊能町の山間部に造成したため池で1996年6月23日から1997年12月31日まで毎週1回、水生半翅類の個体群動態調査を行なった(調査地および調査方法は第1章第1節参照)。また、残り9枚の棚田についても、水生半翅類の畦からのすくい取り調査を行なった。

 

 

 

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