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第1章 「生きる力」をはぐくむ教育

 

東京家政学院大学長

中央教育審議会委員 河 野 重 男

 

1 「生きる力」をはぐくむ

 

第15期中教審は,「これからの教育の在り方及び家庭・学校・地域社会の連携の在り方について」を大きな柱として審議してきた。その第1次答申では,子どもたちに「生きる力」とゆとりをはぐくむことの重要性を指摘している。そして引き続いて「これからの教育の在り方」について審議してきた第15期及び第16期の中教審の検討の結果が,第2次答申として発表されたが,そのもとになる「審議のまとめ(その2)」が,5月30日に発表されている。

今回の第2次答申は,当然のことだが,第1次答申との一貫性と整合性をもつものである。このことは,「審議のまとめ(その2)」の「はじめに」に明確に述べられている。

本審議会において我々は,諮問を受けて以来,学校・家庭・地域社会を通じて,大人一人ひとりが子どもたちをいかに健やかに育てていくかという視点に立つと同時に,子どもの視点に立つということに特に留意して審議を進めてきた。また,第1次答申後は,答申の趣旨を踏まえ,「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことを目指し,個性尊重という基本的な考え方に立って,いかにして一人ひとりの能力・適性に応じた教育を展開していくかという観点から審議を進めてきた。

「生きる力」を基本的な方向として考えていくべきだということは,中教審の早い時期に共通理解に達したことであった。21世紀の社会を確実に生き抜くために,子どもたちにどのような力を身につけさせ,どのような人間にしていくことが大切なのかを問うたわけである。

戦後わが国の経済・交通・情報等は急激に進歩発展してきたが,その反面,生活はゆとりを失い,子どもたちの生活も大きく変化してきた。

文部省の「子どもの健康サーベイランス」調査によると,今の子どもたちは,学校の体育や部活動を含めても,1日平均2時間しか戸外で運動せず,逆に室内では,テレビやゲームなどで5時間も遊んでいるということである。このようないずれ慢性疾患を引き起こしかねない状況が,今の子どもたちの生活に現れていると指摘されている。また,いじめや不登校,薬物乱用などさまざまな社会問題もあり,このような子どもたちの状況に,学校・家庭・地域社会がどのように対応していくかについて真剣に考えなければならない今日なのである。

今の子どもたちが確実に当面し,担っていかなければならない21世紀の社会は,きわめて変化の激しい,しかもいつ何が起きるかわからない不確実性の社会だといわれる。高齢化が進み,2人で1人の高齢者を支えなければならないような時代になるといわれる。また,マルチメディアなど,情報化の進展も激しく,いわゆる知識の陳腐化が早まり,学校で学んだことを不断にリフレッシュすることが求められるようになる。

このような時代に生きる子どもたちを,われわれは,今の家庭教育,学校教育,社会教育の

 

 

 

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