現在、橋本内閣のもとで6大改革の1つとして教育改革が論議されていますが、冒頭に述べました日本の青少年の現状から考えますと、余程の抜本的な改革でなければ、成果は期待できないと思います。今申し上げましたドイツの例のような大胆な、大幅な改革を私は考えたいと思うんですね。そういった改革の提唱者として、あるいはその実行者として、私は青年の家に大変期待を申し上げているわけです。
ここまでが青年の家に対する期待なんですが、時間が多少ございますので、もう少しお話をさせていただきたいと思います。
今年の夏、私の関係する財団がドイツとイギリスからの17歳、18歳の若者を日本に招きます。そして日本の高校生と一緒に国立中央青年の家でお世話になることになっております。2日間という短い期間なんですが、私が非常に楽しみにしておりますのは、そういったドイツの若者、イギリスの若者、あるいは日本の若者が青年の家で生活して、どんな感想を持つかなということなんです。この平業は性格上高等学校が関係するものですから、青年の家にお世話になるんですということを学校の先生に言いました。そうしたところ、学校の先生は「えっ」という否定的な反応なんです。理由を聞きますと、昔、自分が青年の家に行った時の印象、非常に規則や何かがやかましくて、窮屈な思いをした。そうすると、ここへ若者を連れていって、果たしてよく適合できるんだろうかという心配をなさるんですね。私が昔、初めて青年の家にお世話になったのは昭和41年なんですが、その当時は、やはり私も同じような感想を持ちました。
しかしながら、最近の青年の家は随分変わったですよね。私はその国立中央青年の家に何度かお世話になっておりますが、青少年をあそこへ連れていくことに何の心配も感じておりません。高等学校の先生も一緒に行くんですが、よく見てもらいたいと思っているんです。今の青年の家は昔の青年の家と違うということを体験してもらおうと思っております。先生の世代もそうですし、今の若い人達にもできるだけ多く青年の家を是非とも体験させたいと思います。先ほどいろいろな方策を申し上げましたけれども、みんながやはりそういう気持ちになって、機会があれば青年の家に行こうと言うようになって欲しいと願っております。
私は現在の青年の家の職員の方々、あるいは施設は、日本にとってこんな貴重な、いわゆるインフラストラクチャーはないのではないだろうか、教育のための基礎的な施設はないのではないかと考えております。これからこれだけの人を養成し、これだけの施設をつくるといったら大変なことですけれども、既に立派な施設が全国にたくさんある、すばらしい職員がそこにたくさんおられるわけです。残念ながら、我々はその持っている宝に十分気づいていないのではないかという気がしてなりません。そういう意味で今年の夏、若者及び先生がどんな反応をするか、大変期待と興味を持って今見守っているところです。
最後に、これはちょっと細かな話になって大変恐縮ですが、せっかく所長さんがたくさんおられますので、お願いを申し上げておきたいと思います。国際交流で青年の家を利用させていただくに当たりまして、やはり幾つかお願いしたいことがあるんですね。それは何も職員に外国語を研修してほしいとか、あるいは外国人への対応になれてもらいたいということを言おうとしているのではないんです。
これはもちろん基本的にはそうあって欲しいんですが、そんな大きなことではなくても改善できるところがたくさんあるんですね。
もう既に多くの所でやられているとは思いますけれども、例えば英語であるとか、中国語であるとか、韓国語であるとか、いわゆる外国語の表示、また使用についての外国語のパンフレットの用意ですね。それから、国際電話が案外なかったり、少なかったりする場合があります。そういうものをなるべくたくさん利用しやすいところに架設していただきたい。それから、外国人は大きな荷物を持って旅をする関係で、もし宅急便が利用できれば大変便利なんですが、荷物の管理や何かで、それはなかなか難しいと言われる場合がよくあります。今は宅急便の時代ですので、そういった便宜を図っていただければ大変ありがたいと思っております。
それから、これから施設をおつくりになる場合は国際的な配慮をお願いしたいと思います。外国人の中には体の大きい人が沢山おりますし、荷物も大きいのを持ってくる場合が多いですから、それに十分対応できる広さを確保していただきたいと思っております。以上この機会をおかりしてお願いを申し上げさせていただきました。
お役に立たないお話を申し上げて大変恐縮でございました。これをもちまして私の基調講演を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。