期間が最低6カ月、最長12カ月というのも同じです。働く場所が福祉施設ではなくて、自然保護センター、国立公園、あるいは鳥類保護監視所等、環境に関する施設で働くことになります。
それでは、ドイツでは、この2つの制度をなぜ設けたのかということですが、8の理由を挙げております。
第1は、責任を強く自覚した社会福祉またはエコロジーにかかわる行動の習得。みずからそういう社会福祉あるいはエコロジーに関する行動をすること。第2は批判能力、コミュニケーション能力、協調性を発達させること。第3は個性を伸ばすこと。第4は自己の価値観を見直すこと。第5は先入観や攻撃的な精神をなくすこと。ここら辺までは青少年の自立を促すという目的につながると思います。第6は社会とか社会福祉、あるいはエコロジー関連のことをよく洞察するようになること。第7は社会福祉やエコロジーに関する職業を知ること。第8は社会福祉やエコロジー分野への関心を高めることとなっております。
これに参加した人たちが、その後、どんな青少年に変わったかという評価ですが、多くの若者が青少年としてやってきて、若い成人として巣立っていくという言葉で集約をしております。それを解説しますと、青少年がより成熟し、より強い自信を持ち、チーム内でも自分を主張できるようになり、自分の意見を自由に、オープンに言うことができるようになるという評価をしているわけなんですね。
私はこの3つの制度を見ますと、ドイツでは毎年、先ほどのZIVIの方が12万人から13万人、ボランティア社会年の方が7000人、ボランティアエコロジー年が900人ぐらいということですから、相当多くの青少年がこの3つのボランティア活動――代替役務の方はボランティアじゃありませんけれども、あえてそういう言葉でくくらせてもらえば、そういう活動に参加しているということになるわけです。そして、それがドイツの青少年に与える教育的効果というものは非常に大きいと言われております。
代替役務の方は男性だけですけれども、ボランティア社会年は女性の方が多く参加をしています。ボランティアエコロジー年の方は男女同数の割合で参加していると聞いております。ドイツでは、2030年には65歳の老人が人口に占める割合が3分の1になります。そういうことを視野に入れて、この制度を実施しているわけです。日本はドイツよりも早いペースでその割合が増えていますが、日本がその状態になったときに介護の問題を他人任せにできるのか、またお金で解決できるのかを考えますと、決してそんなことが出来る筈がないわけです。ドイツは、一方では銃を持って国を守るという役務と同時に、こういった介護とか、あるいは社会活動によって国を守る教育を青少年に対して着々と実践していると言うことができると思います。私は、こういうことを既にやっている国があるわけですから、日本もそれを大いに研究する必要があると思っております。
日本では、それでは、こういったフルタイムボランティアはないのかということですが、私の知っている例といたしましては、日本青年奉仕協会がこれを行っております。これはご存じの方もたくさんおられると思います。ただ、残念ながら、これは法律に基づくものではないわけですね。我が国にはこういったボランティアに関する法律はないわけですから。この日本青年奉仕協会は、毎年50名から60名ぐらい、1年間のボランティア活動を実施しております。しかし、応募は定員の3倍ぐらいあるということですから、日本でもそういった考えの若者は随分いると考えられます。その参加者の中に、青年の家で1年間仕事をなさっている人もいるんですね。国立那須甲子少年自然の家、あるいは国立沖縄青年の家、徳山市大田原自然の家でこういった人たちが働いているというのが、この日本青年奉仕協会のパンフレットにのっております。
日本は今、毎年大体120万人ぐらいの人が生まれますから、120万人をこのような義務のところまで一遍に持っていくということは確かに大変難しかろうと思います。しかしながら、例えば就職の時に1年間フルタイムのボランティア活動をした人を評価するとか、あるいは大学の単位、1年間、認定された施設で働いた場合は1年分に相当する単位を与えるとか、いろいろそれを評価する方法によって多くの若者をこういった分野に導入する可能性は十分あると思うんですね。