また、ボランティア社会年を主催する団体によって、その社会年ボランティアと一緒に指導を受けている場合が多いこと。だから、実質的にはボランティアつまり、これから述べますボランティア社会年に参加する若者と同じような社会奉仕に携わっていることというのが1つの理由です。
次に、多くの代替役務者はわざわざ介護のきつい社会福祉施設を探すんだそうです。これらの若者は武器を持った役務を拒否するというだけではなくて、ボランティア社会年の若いボランティアと同じ動機を持っていることから、このきつい仕事を探すと言われております。昔は代替役務を希望いたしますと、あいつは怠け者であるとか、愛国心がないとか、いろいろな批判があったようです。冷戦構造のときは特にそうだったようですが、現在では評価が全く変わってきていると言われております。
3つ目の理由といたしましては、ドイツの多くの社会福祉施設は、そういった代替役務者あるいはボランティア社会年のボランティアなくしては、介護を受ける人々に必要な人的介護を行えない状態になっているという現実があります。結果的には、この制度はドイツの福祉行政を支える大きな力になっているわけです。
ことしの1月ですが、NHKの「ドイツ語会話」という番組を見ておりましたら、その代替役務者として活躍しております20才の青年が出てまいりました。ドイツの若者シリーズとして紹介されたわけなんですけれども、彼は筋萎縮症の会計士の家に住み込んでいます。1室をもらいまして、その人の家に住み込んで、24時間、一緒に生活をしているわけですね。食事をつくったり、その後片付けをしたり、洗濯をしたり、いわゆる家事ですね。それから、その人が職場まで行く運転手、送迎をやるわけです。それから、障害者ですから、入浴とか、あるいはトイレ、これは自分ではできませんので、20才のこの代替役務者が手助けするんですね。余り見事なものですので、NHKに問い合わせてみたんです。これはドラマなのか、それとも本当にやっていることなのかということを聞きましたら、本当なんだそうです。ドイツの放送局の方でそういった例をルポルタージュして、それをドイツ語番組にまとめたんだと言っておりました。今たまたまドイツの青少年指導者たちが来ているものですから、そのことを話しましたら、そういうことは幾らでもあるというんですね。そして代替役務は、ドイツの若者に社会福祉の知識とか経験を植えつけるだけではなくて、若者の自立心を涵養する上で、大変大きな意味を持っているというお話でした。
次にボランティア社会年、FSJという略語になるんですけれども、この制度についてご説明したいと思います。
これは1964年に制定をされましたボランティア社会年促進のための法律、振興法と言っていいかもしれませんが、そういう法律に基づく制度です。これはボランティアに関する法律なんですが、その内容はおよそ次のとおりです。この事業に参加できる人は17歳から27歳の男女です。参加する期間は、最短6カ月、最長1年(12カ月)となっております。それぞれに導入時、中間時、それから終了時にセミナーがありまして、12カ月のサービスにつく場合は、合計25日間はそういった研修を受けることになります。
どんな仕事をするのかといいますと、先ほどの代替役務とほぼ同じです。病院、老人ホーム、身体及び精神的障害者のための施設、保育所、あるいは青少年センターといったところで働きます。毎年約7000名のボランティアが参加をするそうですが、希望者はその何倍かになるということです。今までで約30年の歴史がありますけれども、10万人以上の若者がこのプログラムに参加しております。これに参加した若者は、宿舎、食事、作業衣は支給されますけれども、あとは月額3万円前後の小遣いをもらうだけです。これが2つ目のボランティア社会年という制度です。
3つ目は、ボランティアエコロジー年というものです。これの頭文字はFOJ。ドイツ人と話すときは先ほどのはFSJ、これはFOJということで話せば向こうにもわかってもらえるわけですが、これもやはり法律に基づいて実施されております。1993年にボランティアエコロジー年振興のための法律が制定されました。この参加者は先ほどとほぼ同じで16歳から27歳までの男女です。