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青年の家、少年自然の家とか、こうした施設のことをこれから青年の家と全部総称させていただきますけれども、私は体験学習の場として青年の家が重要な役割を一層果たしていくべきだと強く思っているものです。さて当面、青年の家を活用してどんなことが考えられるでしょうか。現在でも、小学校、中学校、高校の利用というものがありますけれども、非常に短い期間ですね。やはりこれは、私は1週間から10日間ぐらい、もう義務としてやるべきだろうと思います。これが1つです。

2つ目は、これもこの前の新聞に出ておりましたが、教員志望者に介護体験を義務づけること、これは今国会で実現を図ろうとしておりますね。最低7日間以上、養護学校や社会福祉施設などで介護実習を義務づけるというものですが、私はその7日間という日数では短過ぎると思います。また介護義務に加えて私は、青年の家での体験も義務づけるべきと思います。そしてこれは教員志望者だけではなくて、現在既に学校の先生になっておられる人たちにも、青年の家で単に研修を受けるだけではなくて、青年の家で働くことをやはり義務づけていきたい。今、急に小中学校あるいは高校の利用を多くすると、学校の先生が青年の家に不慣れですから、職員の方が大変になります。しかし、そういった教員志望者に補助者として青年の家で仕事をして貰い、また学校の先生にも補助者として働いてもらう。職員、引率の先生、それからそういった補助者、みんなが力を合わせれば大勢の利用者にも対応できると思っております。

私はさらに進めて、すべての若者にそういった福祉事業、青年の家のような社会教育事業に1年間、体験学習を義務づけたらどうだろうか、そういう制度を検討したらどうかと今考えております。これは非常にとっぴな考え方、あるいは非現実的と思われるかもしれませんけれども、これから申し上げますドイツでは、それがかなりの程度実施されているんですね。別にユートピアのことを私が申し上げようとしているわけではないんです。それをご紹介したいと思います。

ドイツには、そういった体験学習の大きな柱になっております活動の代表的なものとして、次に述べる3つの制度があります。1つは、兵役にかわる代替役務につくというものです。2つ目は、ボランティア社会年という制度です。もう1つは、ボランティアコロジー年という制度です。この3つがドイツにおける体験学習制度の大きな柱になっております。

まず、代替役務とは何かということですが、ドイツでは憲法によりまして――憲法とは言わないで、向こうでは基本法と言うんですが、18歳以上の男子には兵役の義務があります。しかし、同時にその基本法は、良心的理由によって兵役を拒否することが認められておりまして、そのかわり、それにかわる民間での社会奉仕につかなければならないことになります。これをドイツの人たちはZIVIと略称して呼んでおります。現在、兵役に行く人と代替役務につく人の割合ですけれども、約80%が兵役に、約20%が代替役務についています。自分は代替役務につきたいという申請を国の機関にいたしますと、現在では大体90%が認められるということです。兵役は10カ月、代替役務は13カ月が任期です。ここ数年、いつも12万人から13万人の人たちが代替役務についております。

どんな仕事をするのかということですが、そういった人たちは、病院であるとか、老人ホームであるとか、障害者の施設であるとか、あるいは青少年の施設で働きます。毎月900マルク(約6万円)の報酬をもらいます。この報酬は兵役の場合とほぼ同じです。これはいわゆる基本法上の義務ですから、ボランティア活動ではありませんけれども、 ドイツでは、それにもかかわらず、これをボランティア活動に準じて考えております。それは次の理由によります。

多くの代替役務者が仕事をする社会福祉施設では、その代替役務者と、これから述べますボランティア社会年で参加しているボランティアとが一緒に働いている場合が多いこと。

 

 

 

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