こういう時期はあるけれども、しばらくすれば、これは突破できるんだということをおっしゃった。ただし、心配なことが3つあるんだということで、1つは、大地震があったら、やっぱり大変だということですね。もう1つは余り関係ないので申し上げませんけれども、もう1つ挙げたのが、最近の男の子は元気がない。男子に元気がなければ日本は持ちこたえられない。自分は楽観論を言うけれども、今の男の子がこのままでは非常に心配だということを、あの楽観的な発言をされる渡部昇一先生がおっしゃっておりました。
最近の日本経済新聞に出ていたんですが、小学校5年、中学校2年、高校2年、この3つの年齢に不登校とか家庭内暴力などの問題があらわれやすいんだそうですけれども、そういったカウンセリングにやってくるのは圧倒的に男の子が多いんだそうです。それからまた、その記事の中で中学校の先生が述べておりましたが、中学校で生徒会長とか、あるいは各種委員長なんかになるのは女子がほとんどである。ずらりとそういう女子が並んじゃうんだということです。それから、企業の新人研修を担当している友人の話ですと、大学を出て、あるいは高校を出て就職をして、企業で研修をするわけですけれども、やはり男性の自立心の欠如というものを強く指摘しております。30歳ぐらいまで自立できないのではないかというようなことすら言っております。
先ほど一般論として述べたいろいろな青年の問題点、あるいは今申し上げました男子の問題点なんかを考えますと、結局そういう人たちが集まって社会をつくり、日本をつくっていくわけですから、私たちはそういう問題についてどう対処したらいいのかということをきちんとやりませんと、渡部先生がおっしゃるように、やはり日本は非常に危ない状況になっていくのではないかという気がいたします。
それでは、どうしたらそういった問題を解決できるんだろうかということですけれども、やはり私は戦後50年の日本の教育の在り方を、ここら辺で本当に抜本的に見直さなくてはならないのではないかという気がしてなりません。今まで学校教育が圧倒的な比重を持ってきたわけで、しかも、その学校教育の中で知育教育がやはり中心でした。しかし、これから自立心を育てるための教育、心を開くようにするための教育、あるいは社会性を身につけさせる教育こそが重視されなければならないのではないでしょうか。そのためには、1つには学校自身が変わる必要があります。学校のカリキュラムであるとか、教え方といったものを変える必要がある。
これも先日読んだばかりの新聞の論壇に投稿されたある校長先生のご指摘ですけれども、小学校では考えるのは、読み書きとか、算数とか、体育とか、あるいは徳育とか、そういうものだけでいいんだ。本当に基礎的なものだけでいいんだというご主張です。基礎をきちんと教えないから高校中退のような現象としてあらわれてくる。その根っこはここにあるんだ、余りにも小学校で知育中心にカリキュラムがつくられ過ぎるという指摘がありました。こういうような学校教育自体の変革が1つは求められるだろうと思います。もう1つは、学校と社会。社会といいますと、例えば家庭教育とか、あるいは社会教育であるとか、地域教育であるとか、そういったものを教育としてトータルに考えていかなければならないということが非常に強く要請されてきたと思います。
そこで今、非常に関心を集めている言葉が「学社融合」という言葉なのではないか。まさに多くの人がそのことに気づき、そうしなければならないと思っておられるのだろうと思います。「学社融合」という言葉は、現在、広くとまでは言いませんが、徐々に使われるようになっておりますが、これを単なるスローガンで終わらせないようにしなければならないと思います。
それでは、その「学社融合」を実現させるためにはどうしたらいいんだろうかということであります。それは、先ほどちょっと触れましたが、カリキュラムを変えて、やはり体験学習の重視を考えるべきなのだろうと思います。小学校、中学校、高校のカリキュラムをそういう意味で大幅に変える必要があると思いますし、学校週5日制における休日をどう使っていくか、体験学習の機会をどうやって多く設けることができるかということを我々は考えていかなければならないと思います。