また、不登校なんかの理由なんですが、非常にはっきりしない点がございます。不安など情緒の混乱というのが26.7%、無気力で何となくというのが25.2%で、約52%が大した理由とも思われない理由で学校に行かない状況なんですね。そういったことが先ほどの人間関係であるとか、精神的なもろさとか、そういうものをあらわしているのではなかろうかと私は考えております。
最近の興味ある調査報告ですけれども、新人教員に不足しているものにどういうものがあるかということを県等の教育委員会にアンケート調査をした結果があります。新人先生の中で当然備わっていなければならないと思われる能力のうち、子供を理解する力、あるいは子供を指導する力不足を感じるというのが、小学校、中学校の先生の場合で70%、高等学校の場合で63%。それから、同僚とか保護者との人間関係を保つ能力に欠けていると思われるパーセンテージは、小学校、高校で70%、中学校で65%というアンケート結果が出ております。
通常、学校の先生になるような人は、子供好きであるとか、あるいは人間関係が得意な人ではないかと私などは思うわけですけれども、実際はそうではない。学校の先生になろうとしている人までこういう数字になるということは、それ以外の若者の間でも、こういった人間関係の構築がうまくいかない人の割合が非常に大きいのではないかということをうかがわせるわけですね。
先日、一流大学と言っていい、ある大学で精神面のカウンセラーをしている人から聞いたんですが、大学生でも相談がもうひっきりなしなんだそうです。10人ぐらいは毎日相談に来るということを言っていました。そこで目につくのは、非常にひ弱い、自信がない、実体験に基づく、いわゆる経験が少ないせいで、すべてのことに自信がない人が多いということなんですね。私は、こういった若者の現象の中でとりわけ注目しておりますのが、男の子の問題なんです。国際交流を通じて、比較して見ておりますが、そういうことが日本の男の子に非常に顕著にあらわれているのではないかという気がしてなりません。
私の関係しております(財)世界青少年交流協会、あるいはもう1つ、私は高校生の海外派遣をやっております財団法人にも関係しているんですが、そこで募集をしますね。そうすると、圧倒的に応募者は女子です。大体8・2か7・3ぐらいで女子の方が多いんですね。男子の場合、班活動とか、そういうのがあるせいかなと思って、高校生だけでなくて大学生にまで応募資格を少し広げたんですけれども、やはり応募してくるのは大学生でも女子が大変に多い。男の子は、好奇心といいましょうか、海外へ行ってこういうことをしたい、こういうことを見てきたい、あるいはこういう人たちと人間関係をつくっていきたいといった意欲がどうも乏しい。反対に最近の女子は非常に活発ではないか。女子が活発になると、男子が不活発になるというシーソーのような関係では大変困るんでして、女子の活発さは大変歓迎すべきことですけれども、同時に男子も活発になってくれなければ困ります。
この前、その試験のときに、たまたま面接のグループが女子大生ばかりだったものですから、最近の男子についてどう思うかと聞いてみたんです。そうしたら、大変悪口が出てまいりました。まず、考えない、そして発言しない、行動しないと、自分の同世代の男子を非常に批判的な目で見ているわけです。国際交流以外の我々弁護士の仕事の方でも、例えば最近の離婚問題なんかでは、男性が非常に劣位の立場にあります。むしろ女性の方から、あなたとはもう一緒にやっていけないということを突きつけられるケースの方が目立っているんですね。そうしたときにまた男性の対応も非常におろおろしておりまして、毅然としたところがないというようなところが多く見られます。これは私だけの経験ではなくて、ほかの弁護士に話を聞いてもそうですし、調停委員と話をしていてもそうなんです。そういうことで、私はとりわけ男の子の問題を注意して考えていかなければならないのではないかという気がしてなりません。
私の心配を裏づける話として、最近、上智大学の渡部昇一先生のお話を聞く機会がありました。渡部先生は大変威勢のいい先生で、今、日本は大変な閉塞感に覆われているけれども、また悲観的な考え方が非常に強いけれども、全然悲観する必要はないんだ、日本は大丈夫だ。