9日分並んだやつを片っ端から試食してくださいというので、しました。その辺で売っているインスタント食品そのままです。味が濃くて、甘辛くて、中には何とも言えない香辛料や調味料が強烈に入っているやつですね。「いやあ、これを召し上がっていて、皆さんどうだったんですか」とお聞きしましたら、実は9日間のうち、5日目ぐらいから、目をつぶると星が見えるんじゃなくて、くるくる回るのはおふくろの味だったと言うわけです。
あのスペースシャトルは、彼を入れて6人の飛行士で、彼以外の方は皆さんアメリカ人なんですが、イタリー系であるとか、イギリス系だとかドイツ系のアメリカ人なんですよ。若田さんは目をつぶると、肉じゃががくるくる回ったというんですね。ほかの方は、例えばイタリア人というと、マンマのサルサ・デ・ポモドーロの味というんですね。ポモドーロというのはトマトソースなんです。マンマというのはお母さんの味。やっぱりくるくる回るそうですよ。そして、安心する味がないといらつくんだそうですね。あの狭い宇宙船の中でいらつかれて、あれは相当お金をかけて、各政府が持ち出しで開発費の中に、何かカエルを逆さにしてみたりいろいろして実験をやっていますよね。ところが、いらついて本当にまともな実験ができるんですかというお話をしたんですけれども、9日間なら何とか持ちこたえたようですが、21世紀にはアメリカとヨーロッパと日本と共同で、宇宙ステーションを打ち上げるんだそうです。その中で1年以上滞在だそうです。これだときっと精神分裂症とか精神的に不安定な人が出るでしょうと言っていました。食事は、精神安定剤なんです。
おふくろの味というのは、大体4歳から17歳ぐらいまでの間に食べたものが1つのベースになるんですね。「三つ子の魂百までも」と言いますけれども、現実に4歳ぐらいからお互いに話し合いながら、何を食べているかが理解できるわけで、そのぐらいの年からおふくろの味というのがきっとなじむんでしょうね。ですから、かれらは宇宙食はまさに精神安定剤を宇宙食にしてくれなきゃいけないんですね。
さあ、そこで私は地上を眺めてみたんです。先ほど6割と申しましたけれども、今東京で下宿している学生さんたちの実態をご存じでしょうか。大体9割ぐらいが袋ですよね。チーンとやってみたり暖めたり。ですから、おふくろの味じゃなくて、「お」をとると「袋の味」になるわけです。まさに袋の味を食べていていいのかな。だから、精神安定を欠くようなものばかり食べているわけですから、それで受験戦争に臨んだりいろいろしているんですから、これは絶対に性格もだんだん悪くなってきちゃうんじゃないかなと思うんですね。こんなことをこのごろ考えてずっと来ておりまして、そのためにも、食育を何とかしたいなというところなんですね。さて、話を少し変えることにしましょう。
私、献立を立てるに当たって時々あれっと思うことがあります。日本料理というのは旬というのを非常に大事にしてきました。日本列島というのは北から南まで非常に長いですし、神代の昔からと言ったらおかしいですけれども、地球全体が今温度が少し上がっているようですからどうなのかな。また下がっている地域もあるようですけれども、日本はちょっと上がってきているんですね。しかし、潮の流れだとか、やっぱり太陽の恵みというんでしょうか、そういったものに関しては、この数百年の間、余り変わっていないんですよ。
3月3日になりますと、おひな祭りということで、ハマグリをつけますね。しかし3月3日ですと、このハマグリがまだ身が薄いんです。これが4月の中ごろを過ぎると、ぷっくら膨らんで本当においしいんですね。何だろうな、これは輸入物かなと思っていたんです。そうしたら、九十九里あたりでちゃんと地のものとしてとれているのに、これがこの日本列島の気候にちゃんと合わせて、4月の中ごろになるとおいしくなるんです。どうしてだろうと思ったら、これは新暦と旧暦の差がそこにあらわれているんだということを改めて発見しましたね。
新暦というのは、ご承知のように、キリスト教圏のいわゆる冬至祭、冬至祭というのは、12月25日、キリストが生まれる前からあったそうですけれども、この冬至祭の日を後からキリストが生まれた日にしたようですね。