「だらり」は本来は仏教から来ている言葉らしいんですけれども、今の解釈でいうと、朝から、昼からふろに入ると、だらりとして緊張を解くという意味ではこれがいいんだよと、こう教えておられる。毎日昼からふろでだらりだと困るんですけれども、たまにはいい湯になるわけです。小原庄助さんじゃありませんけれども。
「時々下風あそばれたし」と。下風というのはご存じですよね。徳川時代から生きている方はよくご存じだと思うんですけれども。上風というのはげっぷですから、下風はおならなんですね。これは「あそばされたし」と言うんですから、やはりためちゃいけない。健康体の人でも大体200ccたまりまして、ちょっと体を悪くすると2リッターぐらいたまりますけれども、これをほうっておきますと逆流するんですね。腸の血管からまた静脈に入りまして、それで肺まで到達するんです。ですから、また肺から出ていくことは出ていくんですけれども、毒素と同じですので、長い時間ためてはいけないということで、そういう話だろうと思いますね。
ですから、天海和尚のような長生きの極意、この方は108歳まで生きた。ある本によると140までというんですけれども、僕は108歳が一番この方の寿命だろうなと拝見しております。皆様ぜひこの歌を実践されると長生きできるそうですから、おやりいただければなと思います。
さて、私は食育というものの中でまず一番最初に感じましたのは、世界で一番料理のできないお母さんを抱えている都市が東京なんです。ロンドン、パリ、北京、上海、そしてバンコクとか、いろいろなところをサンプリングをとりまして都市の食生活というものをやってみたことがあるんですけれども、それによりますと、核家族制をとってしまった日本が一番急速な短い期間でこれをなし遂げたと言ったらおかしいんですけれども、大体25〜26年前から大家族制が少なくなりましたね。そして現在、四世代で住まないとかいうことが定着してきていると思うんです。そのことによって、食だけじゃなくて、衣も住もそうですが、衣食住すべてに関して、おばあちゃんの知恵とかおじいちゃんの今までの生き方とかいうのを見る機会がないんですね。ですから、おばあちゃんからお母さん、お母さんから娘へという伝承が切れてしまった。これが1つ原因。
もう1つは受験勉強もあるようです。うちの子供もそうでしたけれども、学校から帰りますと、すぐ塾にUターンですよね。帰ってくるのが9時、10時ということですから、家で親子で話す機会なんか少ないわけです。おまけに子供が少ないですよね。今、一家族1.5人ぐらい。そうしますと、かぎっ子ばかりで主婦も表で働いているという例が非常に多いです。子供は1,000円とか1,500円お金を渡されるんですね。さあ、それで好きなものを食べていてちょうだいというわけです。
ベンディングマシンというのがありますね。110円入れるとガチャンと出てくるやつ。この清涼飲料なんですけれども、大体35グラム砂糖が入っているんです。これを1本ならまだしも、暑いなんていうと、3本、4本子供は飲んじゃうんですね。コーヒーに入れるスティックの砂糖は1本3gですから、なんと十本以上入っている計算になります。これを飲みますと、先ほどの満腹中枢が働きまして、食欲を抑えるんです。ですから、いざ食事というときに、「僕要らない」とか、「私食べたくないわ」と、こういうことになります。
今の親御さんを見ていると、子供たちに「何食べたいの?」と、こういう質問ですね。外食へ行きましてもそうですよ。メニューを見せて、「何食べたい?」「これ食べたい」「ああ、そう」親も無責任ですし、子供はますますわがままになる。「これを食べなさい」という親がほとんどいないです。
現在食卓の6割以上が加工食品になりました。新婚さんが出がけにどういう会話をしているか、ご存じですか。今から20年前までは、「あなた、今晩どんなものがお食べになりたい?」と、こうでした。昨今は、「あなた、今晩どこで食べましょうか?」と、こうなるわけです。ですから、もう時代がどんどん変わっていますから、やむえない部分があるんですけれども。
先日、NHKの取材で私は若田光一さんという、スペースシャトルに乗って9日間宇宙飛行士をやっていた人にお会いしました。この方が朝昼晩、石けん箱ぐらいの大きさのプラスチックにフリーズドライの食品が入っているんですが、これにちょっとお湯を差したり水を差したりして、スプーンで食べるのです。