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8) ソーシャルマーケティングに関する分析

 

a ア・プリオリな分析

対象者を、性別×年齢、年齢×学歴、年齢×居住地(市町村規模区分)に分けたセグメント別の分析の結果、特に年齢別に、精神保健ニードや情報入手経路、受け入れ可能なメッセージの種類、精神障害者受け入れの条件に大きな違いが観察され、年齢別に細やかなアプローチが必要であることが示唆された。

まず、若年層(「20〜39歳」)は、精神障害に関する情報を十分認知していない。しかし、伝えられたメッセージは受け入れ可能性が高いことがわかる。この傾向は、学歴が高く、大都市部の若年者により顕著であった。このことから、若年層に対しては積極的に情報を提供するとともに、認知の変更が行動の変更につながって行くよう援助していく必要があろう。

一方、「精神障害者が刑事事件をおこす比率は、一般の人が事件をおこす比率より少ない」というメッセージ?は、年齢層によらず比較的改善度が良好なメッセージであった。精神障害者の危険性を訴える世論を鎮静化させるためにもこのようなメッセージが積極的に伝えられる必要がある。

高齢者層には、「テレビやラジオ」といぅ媒体や、相談先としての「かかりつけの医師」が重要であることが明らかになった。高齢者は一般に消極度が高いことから、これらの媒体を用いて、彼らが必要とする精神保健の情報と合わせて(「退職後の生活」「高齢者の介護」など)、精神障害者に関する啓発を進めていく必要がある。同時に、彼らが嗜好するキャッチフレーズは、「人間らしく生きたい」と「共に生きる」「心に平和を」など、社会的弱者の側面を持つ高齢者への理解を求めるとも見られるものが多い。同じく社会的に弱い立場におかれている障害者たちに対しても共感できる方策を検討していく必要があるだろう。

 

b ア・ポステオリな分析

A群(高消程度・社会的距離大)とB群(高消極度・社会的距離小)、そして、D群(低消極度・社会的距離小・援助行動なし)とE群(低消極度・社会的距離小・援助行動あり)が概ね同じような傾向をみせていたので、以下、A群およびB群(以下、AB群)と、D群およびE群(以下、DE群)の大きく2つの対象を想定して検討を加える。なお、C群は他の4群に比べると以上の分析で明確な傾向をみせなかったこと、および、対象者数が少ないことから、以下の検討では取り上げない。

「AB群」は、精神障害者に対する否定的イメージをもっている人々であり、それを肯定的イメージに変容するようなアプローチを行なうことが考えられる。具体的アプローチの方向は、DE群の人が持っているような、精神障害者に対するイメージをAB群の人にも持ってもらう方策である。DE群は、精神障害者に対して既に肯定的なイメージを持っていると考えられることから、あとはいかに実際の行動に結びつくかを検討すべきと考えられる。この群の人たちが、「建前」として肯定的な解答をしている可能性も考えられるが、さまざまな種類の回答に全体としてほぼ矛盾なく、整合的に答えていることから、この可能性はさほど危惧しなくてよいものと考えられる。具体的アプローチの方向は、D

 

 

 

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