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もがなる可能性をもつ『病気』の一つであり、特別な人ではなく普通の人と変わらない人が多い」というイメージをもってもらうことはさほど困難ではないようである。

とりわけ肯定的な方向に変化した契機としては、回答の内、「実際に接してみて」という人が半数以上を占めており、原イメージと実際とのギャップを実感することによって、イメージの変化が促進されるものと考えられる。

 

5) 精神障害者観について 〜過去の調査との比較を含めて〜

 

精神障害に関する見方やイメージに関する意識項目は、83年調査と比較すれば全般的に見て消極的態度が減少しているが、それでも精神障害者の自律と社会参加に消極的な住民は少なくない。中でも、特に「精神障害者は、一人あるいは仲間どうしでアパートを借りて生活するのは心配だ」は半数以上が「そう思う」を選択しており、多くの国民が近隣で単身者を受け入れることに消極であることがわかる。

これに対して、同様の状況を事例提示して受け入れを聞く社会的距離尺度に関わる質問では、回答者自身が取りあえず隣人として受け入れる回答が8割近くを占めていた。これは、受け入れに必要な条件を明らかにした後の回答であるが、条件を整えれば多くの人たちが受け入れができることを示しており、今後の可能性を示唆する結果と考える。

 

6) 精神障害者観に関連する要因の分析(1)

 

消極度は多くの属性項目、すなわち、年齢、配偶者の有無、同居家族の構成、回答者の職業、現在の生活状況、最終学歴、現住所地への居住時期、地方選挙へ行く頻度、日頃読む新聞、居住地の市町村規模類型との相関が観察された。また、社会的距離尺度も、消極度ほどではないがいくつかの属性項目、すなわち、年齢、現在の生活状況、学歴、現住所地への居住時期、地方選挙へ行く頻度、居住地の市町村規模との関係を持つ。

これらの属性項目の中で年齢の影響は大きく、年齢で統制すると、多くの項目で有意差が観察されなくなった。その中で、学歴(消極度、社会的距離2)、職業(消極度)、市町村規模(社会的距離2の交互作用)は、年齢と独立して精神障害者観に影響していることが明らかになった。

 

7) 精神障害者観に関連する要因の分析(2) 〜関連要因の分析から〜

 

精神障害者との接触体験、精神障害に関する知識、精神的に耐えられない体験、ボランティア経験それぞれが消極度と社会的距離との有意の関係を持っており、特に消極度との間に明確な関連が認められた。

消極度については、前章で関係性が認められた年齢や学歴、および他の要因の影響を取り除いても、接触体験、精神障害に関する知識、学歴、ボランティア経験は独立した影響力を持っており、これらを射程に入れた啓発活動が重要であることが示唆される。

 

 

 

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