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2) 安全で快適な旅行環境の形成

交通行動は一般には派生需要であるのに対し、観光では移動も目的の1つとなる場合が多く、快適に楽しく移動できることが求められる。

また、安全な移動手段が確保されていることは、最も基本的な要件であり、比較的高齢者の観光客が多い和歌山県においては、安全性の確保は特に重要といえる。

従って、列車やバスの車内設備の充実、乗務員サービスの充実、鉄道駅やバス停における安全性の確保などにより、安全で快適な旅行環境を形成することが必要である。

3) 低廉な旅行費用の実現

観光においても費用が安ければ、費用に対する満足度は高くなるといえ、費用の水準が観光地の選択に影響を与える場合も考えられ、費用が安ければパック旅行商品の企画も行いやすくなるといった観光業者の意見も聞かれるなど、公共交通における低廉な料金設定は、観光需要の促進に与える影響が大きいといえる。

また、観光客へのアンケート調査結果をみると、公共交通における運賃への不満が比較的多くみられる。

従って、周遊券や回数券、フリー乗車券などの発行や季節運賃の導入などにより、公共交通料金の低廉化を図ることも求められる。

 

(2) 公共交通機関の連携強化

和歌山県においては、観光地が分散しているのに対して、公共交通のネットワークは必ずしも充分とは言い難い状況にある。前章で検討した周遊ルートをみても、1つの交通機関だけで移動可能なルートは少ない。そのため、円滑な旅行を実現するためには、各交通機関の機能向上とともに、各機関の連携を強化し、公共交通ネットワーク全体のポテンシャル向上を図っていく視点が必要となる。

観光客へのアンケート調査をみると、自家用車を利用する理由として自由に行動できることが最大の利点として挙げられているが、公共交通機関では、タクシーに次いで路線バスが、鉄道や定期観光バスに比べて比較的自由な行動ができると評価されている。路線バスは、観光地をカバーするネットワークが広く、乗降間隔が短いことがその理由と考えられるが、そういった意味では、やや自家用車による観光に偏重傾向にあるといえる和歌山観光においては、路線バスのポテンシャルは高いとも考えられる。ただし、和歌山県においては、バス事業者が各地域で路線を分担し、また、需要から運行本数が限られている状況にあるため、乗り継ぎが重要な意味を持っているといえる。

このように、和歌山県における観光交通ネットワークの形成には、鉄道や路線バスなどの交通機関の連携を強化することが特に重要であるといえる。

従って、利便性、安全性・快適性、経済性といったそれぞれの側面において、各交通機関の連携強化を図る必要がある。

 

 

 

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