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欠いた都市が広範囲に形成される結果となっている。そこで、わが国の都市におけるこうした偏向を正すものとして、防災都市計画の実践が期待されるのである。

 

(3)豊かな生活を保全するための計画

防災はあくまでも手段である。豊かな生活を築きあげるとともに、またそれを保持していくうえでの手段なのである。平和であり安全であることは、資産を蓄積し文化を育むことに通じる。戦争も巨大地震も起きなかったが故に高度成長を遂げたわが国の戦後50年が、そのことを示している。今回の地震では、その資産や文化の一部を失う結果となったが、生活や文化を守る手段としての防災都市計画の必要性を認識させることとなった。香り高い文化と豊かな生活の継承と発展をはかるためには、防災都市計画が欠かせないということである。

 

防災都市計回の手順

次に、防災都市計画の手順について述べておきたい。防災都市を計画し実現するにあたっては、先ず「危険を認識すること」、次いで「目標を設定すること」、さらに「計画を策定すること」が必要となる。

 

(1)都市の危険を認識する

防災都市づくりは、都市の危険性を認識することから始まる。どのような危険が存在するかを知らなければ、その危険性を排除しようとする姿勢も戦略も生まれてこないからである。今回の地震は、この危険認識の大切さを教えてくれるものであった。地震が来ないという誤った認識あるいは油断が、地震に対する無警戒あるいは無防備な状態を生み、それがゆえに寝耳に水という形で大きな被害を招くこととなった。ここで問題となるのは、地震が来ないという誤った認識をなぜ持つにいたったか、ということであろう。それは、自然や環境に対する正しい理解を育む土壌がない、ということに尽きる。自然や防災についての情報が一人一人の市民に正しく伝えられていない、ということである。これに関しては、科学者の果たすべき役割を更めて問いなおす必要があろう。

ところで、この危険認織を災害像につなげることから防災対策は始まる。この災害像につなげる作業が、災害想定あるいは被害想定といわれるものである。この災害想定では、どのような種類の危険事象を、またどのような規模の危険事象を取り扱うのか、ということが問題となる。地震といっても今回のような直下型地震だけではない海溝型地震もある。地震だけではなく火山噴火もあれは集中豪雨もある。さらに、自然災害にとらわれることなく社会災害にも目を向ける必要があろう。特定の災害シナリオだけにとらわれていると、思わぬ危険事象が発生した場合に裏をかかれることに

 

 

 

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