日本財団 図書館


4)野外実大火災実験の一例

1979年8月大分県佐賀関町内の日本鉱業佐賀関製練所旧社宅15様を用い、建築研究所と消防研究所が協力して行った実験である。

この実験は、対象となった棟数、規模などこれまでに類のない大きな実験であった。この実験の特色の一つは、その規模の大きさもさることながら、極めて一般市街地に近いところで行われた野外実大火災実験であるということである。これだけの規模のものを、しかもこれほど現に人のすんでいる家屋の近くで燃した例は聞かない。実験場は市街地の南100m足らずの標高差約20mの丘の上に位置する。実験には南風を予定したから、延焼危険、火の粉、煙りなど風下民家への影響は大きい。そのための住民への了解の取り付けのほか、交通規制、安全警戒など周辺との調整が大変困難であったが、地元消防本部の強力な協力により無事終了し、貴重なデータを得ることが出来た。

図-1に見られるように、正画幅20mの建物(41および40号棟、木造平屋3軒長屋)の風下側に半分の10m分だけ樹木を配置し、棟間に樹木の無い部分との延焼状態の差を観察した。点火は42号棟内で2点同時に行ったので、樹木のある側とない側は、ほほ同様の炎上状態を不している。

試験体として用いた樹木は、筆者のこれまでの実験において、最も防火力の高いと判断したサンゴジュ(H=3m,W=1m)である。樹木は、41号と40号棟の間は葉張り分だけ交互に並べ、40号と39号棟は単純に葉と葉がつくように1列に並べた。本数は各々10本である(但し、本稿では40号と39号棟間の結果は省略した)。なお、これ等のサンゴジュは、実験日の前日福岡県の苗圃より掘り取り、同日夕に実験場に到着後直ちに立て込みを行い、十分な養生を行ったものである。枝葉は実験の性格上、刈り込んでいない。

観測は、熱電対による温度の継時変化(36点)、8m/mおよびVTRによる連続撮影、

35m/m写真による定時撮影のほか目視による状況記録を行った。熱電対は、1本の樹木に4点(若い番号から順に、頂部、前面、中心、横)設置した。そして後ろの3点は同じ高さとした。なお、41号と40号棟門では、横に当たる点は、隣接した樹木の前面(炎上棟から横と等距離)とした。樹木の無い部分には、樹木の前面および後面の測点が炎上建物と隔たる距離に等しく測点を設定した。そして、これ等、前、後面に相当する測点を結んだ延長が延焼するであろう建物(40号、39号棟)に達した壁面にもそれぞれ測点を設けた。記録は横河電機製YODAC-8によった。なお、図-1で( )内の数字は、それぞれ測点の列を示すものである。例えば(1)列は、00‐04-08‐点の系列を示している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION