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るものである。

樹冠表面の葉温は一般に気温より高いが、樹冠内部には気温より低い冷温城が存在することは、実大火災実験の際に確認された。しかし、樹冠内への熱の浸透に抵抗する冷温域も、やがては浸透する熱によって外部へ押し出される。熱の樹冠内への浸透は、村冠の空隙率によって様々となるが、一般に葉張りの1/3程までと考えられる。これは、樹木の引火、炎上範囲と一致するもので、熱の浸透部分のみ樹木は炎上するものと云える。

 

(1)葉1枚の温度低減効果

小型炉による実験では、常緑広葉樹で40%、落葉広葉樹で30%を示す。針葉樹は葉の規模、構造から1枚としては計測ができない。なお、イチョウは落葉樹ながら、常緑広葉樹と比しても上位に当たる48.3%を示した。葉の厚み、含有水分などが影響して高い値を持つのであろう。

 

(2)1本の樹木の遮温効果

常緑広葉樹で比較的均一な試験体が得られるものにサンゴジュがある。実大火災実験の例では、83〜93%を示した。なお、シラカンでは試験体によって1本では36%ほどのものも、3本集まると90%を上回る。葉が何層にもにも重なることによって効果は増加するわけで、葉1枚の値を大幅に上回るのは当然のことである。針葉樹はカイズカイブキ、サワラとも90%を示した。これが3本となると97%を上回り、ほぼ、完全な遮蔽物となることが分かる。

 

(3)樹帯の連熱率

樹帯を構成する樹木の列数および樹木の間隔並びに配植の如何によって遮熱率に差異がみられる。1列植えの場合、樹木の間隔が葉張りの1/2以下の場合は、80%を示す。

ところが、間隔を葉張り1本分まで広げると、60%に低下する。2列植えの場合は、輻射熱の遮蔽には交互植えが優れている。3列植えの場合は、樹木の間隔を葉張り1本分離しても、95%の遮熱率を示す。遮熱という点から云えば、樹木は3列あれば十分と云えよう。

 

 

 

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