2)樹木の耐火限界値
樹木、特にその対熱面としての樹葉は、高熱を受けると変色するが、これと同時に烈しく蒸気を発生し、折れ曲がるように変形する。この変形の動きは生き物の如くであり、この変形が終る頃には真っ黒に変色している。ここで耐火限界値を超える熱の場合は発火し、以下の場合は黒焦げから次第に白色化するものと、黒焦げのまま裂け目が出来て来るものとがある。このような状態に成ったものはもう決して発火しない。
20,000Kcal/m2h或は550℃以下の熱では、発火後、赤点(Red Spot)が次第に拡大し、葉前面に広がってゆくが、炎となることは無い。筆者の用いた小型炉では、熱源の傘の中の上端に葉を入れると数秒でボッと音がして炎上する。40,000Kcal/m2hは超えていると思われるが、サンゴジュはここでも炎を出さなかった。発火しても炎をあげないということは、防火上極めて大切な条件であり、有効な防火樹として推薦できるものである。
樹木が炎上するのは、変色の過程で、未だ分解生成ガスが発生中に、光熱を受けることが必要なようである。従って、輻射熱だけで発火という可能性は一般に極めて低いと思われる。接炎或は有炎口火の接触があって樹木の炎上はやっと成り立つわけで、遮熱物としては、有効なものの一つとして推奨できる。
樹木の耐火力を評価する尺度として、筆者の実験により得られた輻射熱に対する発火限界値を示すと次のとうりである。(無炎発火、単位:100Kcal/m2h)
常緑広葉樹:サザン力14.9,卜ベラ14.9,モチノキ14.9,ヤツデ14.5,トウネズミモチ14.5,ヤブツバキ14.1,イヌツゲ14.1,クスノキ13.7,ヤマモモ13.7,アオキ13.7, シラカシ13.7,サンゴジュ13.4,スタジイ12.6,マサキ12.6,マテバシイ12.3
落葉広葉樹:コナラ15.3,エンジュ14.9,ユリノキ14.9,トウカエデ14.5,ソメイヨシノ14.5,モミジバスズカケノキ14.1,イチョウ14.1, ケヤキ13.4
針 葉 村:イヌマキ16.1,スギ14.9,アカマツ14.9,ヒマラヤシーダ13.0,ヒノキ12.6,カイズカイブキ11.9
樹木は、凡そ輻射熱で12,000Kcal/m2h、表面温度で400℃が発火限界といえよう。この限界値以下の受熱では、樹木の発火、炎上はなく、その形状は維持されているため、一種の衝立としての遮熱力が期待できることになる。
3)樹木の遮熱力
樹木が火熱に対面した場合、その耐火力により炎上、焼失せず、その形状を維持するときは、一種の衝立として、熱エネルギー遮断機能が期待できる。
但し、樹木の衝立は一般の壁と異なり、空隙をもっているのが本来の姿である。よって、熱エネルギー遮断の能力も、100%密な壁体(理想体)と比較した場合、割り引きをして考えねばならない。理想体と異なり、火熱は樹木(主として樹冠を考える)の中に浸透してく