政と住民のパートナーシップですすめられたことである。災害に強い町を築くには,多くの人が参加し,住民と役所が連携して,創造的に取り組んで行くことが大切である。また,まちづくりを楽しみながらすすめることも活動が充実し,長続きするための重要なファクターといえるであろう。
これからの防災まちづくりは,防災の側面からだけでなく,住環境の改善やアメニティ,福祉など,暮らしや暮らしの場をより豊かにするまちづくりとセットになって総合的にすすめていくことが重要である。このような観点から,京都市の「春日学区の福祉のまちづくり」は,防災活動と福祉活動を一体化し,総合的に取り組んでいる先駆的な活動事例として挙げられる。歴史的な町並みや伝統的な暮らしの文化が残る古都・京都の町は,また元小学校区を単位とした自治活動やまちづくりが盛んであることでも知られている。
通常,大都市のこのようなコミュニティ活動は,防災と福祉が別組織でお互いに関連の無いままにすすめられている例が多いが,この町では町内会や消防団,ボランティアの会等の各種活動団体が連携し,高齢者,障害者に対して医療,保険,福祉,防犯および防災の総合的支援体制を構築している。春日学区の「福祉活動ネットワーク図」を見ると多様な活動がリスト・体系化されており,その取り組みの幅の広さと奥行きの深さが窺われる。例えば発足以来7回もの改訂を行ってつくりあげている実用的な「防災福祉地図」や,把握された個人情報の部外持ち出しの禁止などを唱った「プライバシー保護のルール」などは長い時間の中で培われたノウハウが集約化されたものといえよう。こうした取り組みのもたらす効用は,何よりも高齢者が安心して住み続けられるということであろう。これらの日常的な活動は,平時の安全のみならず,災害時にも安否確認,救出救護活動に多大な効果をもたらすものと考えられる。かつて,古い時代の京都の町では,それぞれ独自の暮らし方のルールや町並み形成の規範を持っていたといわれるが,それは共同体として,人々の暮らしの安全やまちの秩序を維持するためのものであった。春日学区のこのような活動は,伝統を引き継ぐ都市における住まい方の現代版といえるのではないだろうか。