備に頭を痛めているところが多い。これらの密集市街地の多くは,スプロールによってでき,整備がたち後れている町である。道路は狭く,老朽家屋が混在し,倒壊の危険,延焼の危険,避難や災害救援活動の困難など種々の防災上の問題を抱えている。また町の骨格となる街路が未整備で,日照や通風,緑やオープンスペースの不足など住環境の面でもいろいろな課題が累積している。震災で大きな被害を受けたのもこのような密集市街地であった。このような「路地の町」では,災害に強く住みよい町にしていくために,住民自らが町の改善に取り組んでいるところが少なくない。大賞を受賞した「東京都墨田区・一寺言問地区のまちづくり」もそのようなまちのひとつであった。
一寺言問地区は滝廉太郎の「花」で知られている隅田川のほとりにあるまちである。墨堤の桜,向島百花園,料亭街など,歴史を感じさせ,粋な下町の風情や気質を残している。これまで防災まちづくりというと, 防災啓発や訓練,防災施設の整備など堅苦しいイメージが伴うものであった。
しかし,このまちづくり活動がユニークであるといわれるところは,あまり気負わず楽しみながらまちづくりをすすめている点である。その活動を象徴するものが街角に設置される「路地尊」と呼ばれるシンボル設置であろう。路地尊というネーミングは路地の守り神という意味で,路地が持っている良さを活かしながら安全を高めていくにはどうしたらよいかという課題から,酒落気の多い町の人たちが発想した。江戸時代の天水桶を型どったものから現代風にアレンジしたもの,昭和の頃の井戸端をイメージしたデザインなどバラエテイに富んでいる。路地尊の周りには雨水を利用した防火水槽と手押しポンプが設置され,ポケットパークや市民菜園として整備されている。いざというときは防災活動基地として機能するが,普段は子供たちや年寄りの格好の憩いの場,あるいはリサイクルの基地になっている。
この路地尊をまちづくりの起爆剤としながら,街路を改善したり,広場や小さな公園を増やして,町を少しづつ住みやすく災害に強い町にしていく住民参加のまちづくりを進めている。時間はかかってはいるがその成果は着実に上がっているようである。その成果の一つに今回の震災での支援活動が挙げられる。阪神大震災では,まちづくりのメンバーが発明した「天水尊」と呼ばれるポータブルな雨水利用装置を持って駆けつけ,災害復旧支援活動で活躍した。このまちづくりの特徴は2つある,それは防災まちづくりが住環境やアメニティの向上とあわせてすすめられたこと,行