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得するのに必要な領域-領土としての生存圏と自給自足のための資源を「経済的に支配する地域」が必要である、との総合地域(Panregion)の概念を導入し、世界はやがて次に示す4つの総合地域に統合されると主張した(3)。

1 アメリカが支配する汎アメリカ総合地域

2 日本が支配する汎アジア総合地域

3 ドイツが支配する汎ユーラフリカ総合地域

4 ソ連が支配する汎ロシア総合地域

そして、この理論がドイツのポーランド侵攻となり、日本の満州・中国侵略となり、さらにこの汎アジア総合地域の概念が大東亜共栄圏となったのであった。

 

2 海洋地政学の誕生と発展

海洋地政学者を代表するのはマハンで、マハンは17世紀から18世紀に至る世界の海戦史を研究し、1890年に『海上権力史論(The Influence of Sea Power upon History,1787-1888)』を出版し、海上権力(Sea Power)が国家繁栄の必須の条件であると主張し、このマハンの理論がアメリカの国家政策や海軍政策に甚大な影響を及ぼし、アメリカの海外領土拡張に大きな影響を与えた。マハンが海上権力を隆盛させる条件として挙げたのは、?@国土が海上交通の要所にあるか否かの国家の地理的位置、?A国土が海洋に接し適当な港湾があるかなどの地形的特徴、?B領土の広狭、特に海岸線の長さ、?C人口の多寡、?D国民の海洋力に対する認識と熱意などの国民性、?E海洋を支配し利用しようとする政府の政策や姿勢の6つの条件であった(4)。これをチェレンの「国家が強国となるための条件」と比べると、チェレンの第1条件の「領域が広いこと」はマハンの第1条件の「国家の地理的位置」、第2条件の「地形的特徴」、第3条件の「領土の広狭」、第4条件の「人口の多寡」に含まれるであろう。チェレンの第2条件の「移動の自由を有すること」はマハンの5つの条件の中にはない。しかし、マハンの第1条件の「国家の地理的位置」がこれに該当するであろう。海洋国家として発展するには長い海岸線を持ち、多くの海上交通路が集束することが基本的な要件であるからである。チェレンの第3条件の「内部の結束が堅いこと」は、マハンの第4条件「国民の性質」、第5条件「政府の性格」に相当するであろう。

マハンは生産力の増大が海外市場(植民地)を必要とし、製品と市場を結ぶため海運業が育ち、この海外市場と商船隊を保護するのに、海軍が必要であると海軍を位置づけ、商船隊や漁船隊、それを擁護する海軍とその活動を支える港や造船所などをシー

 

 

 

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