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また、練習艦隊の寄港時の活動は音楽隊の広場やテレビでの演奏会、特技員による日本古来の空手、柔道、剣道などの展示、横須賀市内の小学校生が描いた児童画の訪問地の小学校との交換、各地の剣道・柔道・空手道場などへの指導員の派遣、大学などの日本語講座への講師(話相手として)の派遣など、その活動は上は大統領から下は庶民まで多様であった。しかし、練習艦隊の効果で見落としてならないのが、練習艦隊乗組員の長年にわたる無事故と高い規律であり、この隊員の行動が日本への好感情を醸成するでけでなく、日本に対する敬意と信頼性を高めることである。今も私の脳裏に鮮明に残っている言葉は、ワシントンでの大河原駐米大使主催の歓迎会の席上、初級幹部の素晴らしい対応に接したアメリカの高官から、「日本は素晴らしい未来をもっている」と言われた言葉である。

また、近代技術を集めて遣られた軍艦の輸出は、単に経済的利益をあげ、自国製品の技術的信頼を高めて輸出を促進するだけでなく、高度な武器ほどその後の教育訓練、保守整備、部品の継続補給と輸入国との緊密な関係を軍事面から深め、国家安全保障上、外交上からのフリーハンドの利益を持つに至るのである。冷戦時代にソ連はインドネシア、エジプト、ソマリアなどに武器を供与して友好関係を強化したが、現在では経済的利益を求めて多数の国が艦艇を輸出している。このほか、ベルー大地震時にアメリカ海軍は食料・医療品などを搭載した揚陸艦を、東パキスタンの水害には米英およびドイツ海軍が艦艇を派遣して救難復旧活動を支援したが、諸外国の国防白書によると発展途上国に対する測量支援や海図作成、救難など、諸外国の海軍は機動力や指揮通信力を活用して災害時はもとより、港祭りや博覧会などに積極的に艦艇を派遣し、友好関係の促進、輸出の増大や国家のプレステージの威示に努めている。

 

C 海軍力の多目的性および柔軟性

戦争と平和、戦時と平時の間には種々の段階があり対処法があるが、通常不当行為に対しては口上書による抗議に始まるが、戦前の日本海軍による北洋漁業の保護や、1958年のアイスランド沖のイギリスとアイスランドの、「タラ戦争」などに海軍艦艇が出動したように、単なる口上外交で解決できない問題も多い。このような場合、艦艇を派遣することから始まり、パロールの実施、実力による漁船の排除や拿捕と、事態の進展に応じて圧力を高めることによって解決されたケースも多い。特に、派遣艦艇に空母や揚陸艦艇を加えることにより強い意志を示すなど、派出兵力の質量の変化や演習の実施、さらには領海侵犯など、合法的あるいは非合法の対応をソフトに、段階的にエスカレートさせて圧力を加え

 

 

 

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