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た。このように海軍力は国家の意志を明確に表示するものであるが、艦隊兵力の増減や特定の艦艇(空母や揚陸艦)の追加削除、さらには演習の実施や領海侵犯などの行動を加えることにより、圧力を上下させて政治目的を達成することも可能である。また、艦艇には象徴性が強く、ブラジルは湾岸戦争に1隻の旧式駆逐艦を参加させたが、この1隻の旧式駆逐艦が国連決議を支持するブラジルの姿勢を内外に示したのであった。

次に平和時の艦艇の訪問などによる効果を見ると、艦艇は外国の管轄権から独立し、治外法権(Exterrioriality)、不可侵権(Invialability)、庇護権(Right of Asylum)および礼遇の享受など、各種の外交特権を持つ国家主権の象徴である。このため、艦艇の訪問は商船などの寄港とは異なり、国家的威信(プレステージ)を示すだけでなく、友好関係や信頼関係の象徴として受け取られ、1997年の「かしま」「さわゆき」の韓国訪問を、「日韓新時代を象徴している」と韓国の新聞が報じたことからも、その寄港が極めて大きな意義を持っていることが理解できるであろう。海上自衛隊の艦艇の訪問による友好増進などの成果を1982年度の南米遠洋航海について示せば(21)、練習艦隊司令官が表敬した大統領はペルー・チリー・エクアドルの3ケ国、ベルーの大統領は昼食会に来艦した。また、練習艦隊が行った13寄港地における諸行事を列挙すれば、メキシコ・シテイー、バンクーバー開港一〇〇年祭、チリの独立記念日などで市中行進を実施したが、これらは新聞だけでなくテレビなどでも大きく報道された。通常の訪問でも練習艦隊の訪問は常に新聞の1面に大きく取り上げられ、ニューヨークで、このように大きく日本関係の記事が掲載されるのは、昭和天皇のご訪問以来であり、総理の訪米よりも練習艦隊の訪問の方が、日米親善にははるかに効果があると在米邦人は感謝していた。

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