陸海空の輸送距離と価格を比較し、スタンフォード大学のアンソニー・ソコール(Anthony E.Sokol)教授は、1馬力で運べる重量は航空機では15ポンド、自動車では100-200ポンド、鉄道で600-1500ポンドであるが、船舶では2000から9000ポンドであり、海上輸送のコストは陸上の5分の1、航空輸送の50分の1であると述べている(1)。この海上輸送と航空輸送に関する実例を挙げれば、朝鮮戦争では北朝鮮軍が38度線を越えた直後の6月25日から10月21日の間に、航空機1109機が飛行して貨物28214トン、人員39187名を運んだが、当時は搭載量も少なく空輸量は1日平均105トンであった。これに対して海上輸送は戦争勃発直後の6月25日から7月1日の間に、30万9314容積トン、1日平均1万660容積トンの物資を運んでおり、また運行船舶数のデーターを求めるならば、7月後半の16日間に韓国諸港へ230隻が入港し、214隻が出港して兵員4万2581名、車両9454両、補給品8万9000トンを運んでいた(2)。航空機の大型化に伴い、1950年代には全軍事輸送の0.87パーセントしか占めていなかった空輸が、ベトナム戦争や中東戦争では逐次増加し、ベトナム戦争では全補給量の3パーセント、中東戦争では7パーセント、1日当たりC-141輸送機17〜18機が飛行し、最大1100トン、平均約700トンに(3)湾岸戦争では平均約7000トン/日に空輸量は増大した。しかし、湾岸戦争では兵器のハイテク化などにともない、武器や弾薬、燃料や部品などの補給量が増大し、空輸比率は再び2パーセントに低下し、海上輸送の比率は98パーセントに増加した(4)。
(2)海洋の障害性
科学技術の進歩が時間的距離を縮め、輸送単価を大幅に下げたとはいえ、わずか数マイルの海が、ゲリラや工作員の浸透を困難にし、また直接的侵略を抑止してきた。すなわち、海洋を越えた侵略は、いずれが侵略者であるかを世界に明示し、国際世論・国際政治上の不利益を受けるだけでなく、渡洋上陸作戦には大規模な準備を長期にわたり必要とするため事前に察知され、奇襲が困難、作戦も複雑で犠牲が多いことなどから、侵略側に強い制約を与え、古来島国家の安全と独立に寄与してきた。特に海を国境とする国家にとって、海軍力は領土に対する侵略を事前に撃破する最も有効な手段であるばかりでなく、制海権をもつ国家は、紛争の解決に好む時期、好む場所に機動力を発揮して集中し、最も有利な状況で柔軟に、また、ダイナミックに対処可能である。
一方、戦略核ミサイルの命中精度の向上や、多弾頭化による防御突破力の向上は、陸上のサイロ貯蔵の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の報復反撃力としての価値を奪い、機動性、隠密性に優れた原子力潜水艦搭載の大陸間ミサイル(SLBM)を、主力的戦略兵器として登場さ