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せ、この分野における海洋依存度を決定的なものとした。また、海の大浮力を利用した艦艇は航空機・ミサイル・砲、さらには陸上投入兵力である海兵隊などの多種多様な攻撃力や捜索武器、さらに通信指揮装置などの搭載を可能とし、水中・水上、空中の脅威を立体的に排除し、必要な地点へ急速に巨大な打撃力を展開しできる能力を艦艇部隊に与えた。とはいえ、対潜捜索兵器の進歩は海洋の隠密性を奪い、海洋科学の発展は海洋の持つ秘密のヴェールを徐々に剥がしつつあるが、陸地陸地面積の約70パーセントを占め、総面積3億6000万平方キロ、平均水深3800メートという広大な海洋に潜む潜水艦や機雷は、水という複雑な媒体にわずらわされて、宇宙時代の今日でも捜索に決め手がなく、海洋の隠密性を利用する武器の価値に大きな変動を与えていない。第2次大戦までは敵主力部隊を撃破あるいは封鎖すれば、比較的完全な制海権(Command of the Sea)が得られた。しかし、ミサイル・航空機・潜水艦などの進歩発達により、現在では制海(Control of the Sea)を流動的かつ不安定なものとし、今日の制海権は時間的・空間的・質的に極めて流動的な限られたものとなっている。

また、領海・公海の区分が不明確な海洋は、単に資源争奪にともなう紛争を生起させるだけでなく、テロ集団あるいは海賊という国家に帰属しない組織による武力行使、資源の乱獲(特に魚類)、環境汚染、難民や密出入国などを生起させ、冷戦時代の制海とは異なる「海洋の安定(OceanStabilization)」、すなわち陸を主体にしたPKO(Peace Keeping Operation)」の海上版ともいえるOPK(Ocean Peace Keeping)」の動きを加速している(5)。この結果、冷戦構造崩壊後は紛争地域へ急速に展開し、平和維持活動にあたる部隊を輸送し、現地でこれら部隊を支援する艦艇の価値が注目され、諸外国では大型高速両用戦艦艇の建造が進められてきたが、わが国でも本年に至り、人員1000名を収容する大型ドック型の輸送艦「おおすみ(8900トン)」が竣工した。

 

(3)海洋の可能性

海洋には数々の可能性があり未来があるが、現在までは輸送・貯蔵・生産・居住などの空間利用は主として陸上部分に限られて、海洋空間には至っていなかった。しかし、公害・土地取得の困難性・海洋開発技術の進歩などにより、関西国際空港が完成し、沖縄の基地問題をめぐり、最近では移動可能な洋上フローテング空港さえ検討されているが、今後はさらに「メガフロート」を利用した海上原子力発電所、海上コンビナート、海中貯蔵施設、海洋牧場(小規模な養魚施設はすでに実現している)など、海洋空間そのものの利用へと生

 

 

 

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