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の15年以上にわたって、世界の石炭使用量の増加分の3分の2を占めるものと見られている。環境の観点から、最も魅力的な代替エネルギーは天然ガスである。アジアには天然ガスが豊富であり、その主な鉱床は、シベリア、尖閣諸島沖、インドネシア沿岸のナッナ島付近及び南シナ海の各所に存在する。天然ガスの燃焼はクリーンで、公害はほとんど発生しない。天然ガスは、調理、暖房、大量輸送といった消費者及び工業両分野の需要に幅広く対応すると同時に、肥料、セメント、鉄鋼の製造にも使用される。

マレーシア、インドネシア等の諸国はすでに、圧縮天然ガスを地方の交通システムに使用しており、韓国は2000年迄に圧縮天然ガス技術と電気自動車開発のために100億ドル近くを投入する計画である。これら2つの技術は、アジア、特に中国の石油消費を大幅に削減可能であり、協力を推進すべきである。人口密度が高く、公害で汚染され、エネルギー不足に悩むアジアにとって、天然ガスの持つ利点は大きいが、その前途には大きな政治的、経済的障害が立ちはだかっている。ガスは、液化やパイプラインあるいは両方にコストがかかり、輸送がむづかしい。

天然ガスの生産と輸送には大量の資金が必要であることが、天然ガス事業を始めようとする側にとっての大きな政治的リスクとなって、投資を控えさせることとなる。天然ガスの価格は予測不可能な政治あるいは経済の変動要因に関連しており、上下する石油市場価格に連動して動いている。

天然ガスが抱える危険性の削減には国民の支持が不可欠である。20年間にわたって、日本の通産省は、家庭のおける天然ガスの利用を積極的に推進してきた。同様な措置がアジア全体にも必要である。開発支援の役割は、主として日本に任されているものの、クリントン政権が1994年エクソン社とインドネシアのペルタミナ社との間で締結された400億ドルのナッナ群島沖油田開発協定に対して行こなった例に見られるように、アメリカは同国企業に対してアジアにおける液化ガス巨大プロジェクトへの参加を促すことができる。また、アメリカのアジアに対する天然ガス輸出は、同国にとっても、またアジアにとっても重要である。旧ソ連中央アジアのカスピ海地域も、中国、日本及び韓国にとって、中東及びロシアへの依存を減らし、両地域への影響力を増やす上からも、石油の代替供給源として重要になり得る。カスピ地方で産出する資源の東方への輸送には、100億ドルをはるかに超える世界最長の天然ガス輸送パイプラインの建設が必要であろう。そのようなパイプラインは、アメリカにとって外交的及び経済的利益であるだけでなく、東アジアの主要諸国にとっても利益となろう。それは、アジアのエネルギー不足という地理、戦略上の危険性を好機に変える機会を提供する。

アジアのエネルギーの実状は、純粋に経済学上の微積分に矮小化はできない。そのような実状は、現在は捉えにくいが、窮局的には、それが現在進行中の太平洋における政策協議の優先事項にもなりかねない危険な意味合いを持っている。行動を通じて、エネルギーが不信と不確実性の触媒としてよりも、むしろ、アメリカ、日本及び潜在的に不安定なアジア大陸との間の協力の懸け橋となることを保証することが、アメリカの国益に深くかかわっているのである。

以上

 

 

 

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