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日本政府は、また海上の航空行動圏を拡大するために、空中給油機の導入を計画すると共に、ここ数年間「防衛的」航空母艦の取得を検討してきた。完全な外洋海軍(ブルーウォーターネービー)の建設には莫大な経費(おそらく、控え目ながら信頼しうる能力の海軍ですら300億ドルないし400億ドル)を要し、かつ日本にとっては時間のかかる事業であろう。戦術的理由からすれば、完全な空母戦闘グループ(複数)及びかなりの海軍航空兵力が必要であろう。中国の戦力が充実し、アジア及びインド洋海域におけるアメリカのプレゼンスが著しく減少するかも知れないとの懸念から、日本政府とって21世紀初頭の自国の展開について決断すべき時機が近づきつつある。

 

原子力による代替案

エネルギーに対する脆弱性が深まりつつあるアジアの諸国、特に北アジアにとって、原子力エネルギーは極めて魅力的である。原子力発電は、アメリカが全電力の20%以下であるにの対し、日本では全電力の1/3を、また韓国では約40%を原子力発電が占めている。ヨーロッパとアメリカが、いまだにチェルノブィリとスリーマイル島という2つの亡霊の前に後戻りをしているのに対し、北東アジアは、数々の地政学的不確実性と共に、世界で最も野心的な原子力計画を抱えている。韓国、台湾、中国及び日本のような慢性的なエネルギー不足の諸国にとって、導入に伴う初度経費、使用済み燃料処理問題及び安全に対する懸念に対処する方法さえ見つけ出せれば原子炉は厖大な輸入も要らず、ぎりぎりの低価格で大きな発電量をもたらしてくれる。高速増殖炉による原子炉は、永年のエネルギー輸入国をそのくびきから解放できる自己再生エネルギー源となりうる。

原子力発電所は石炭を燃やす火力発電所とは異なり、温室化ガスを放出しないため、酸性雨、地球温暖化、そしてその他の公害を懸念する東アジアの多くの国々に、原子力発電は、適切な安全対策がとられているものとして、むしろ石油や石炭に代わりうる環境に優しい代用品として映る。

この地域の原子力発電は、現在、全世界の約14%を占める。しかし、アメリカのエネルギー省の見通しでは、1992年から2010年の間に、アジアが新しい原子力発電量の48%を占めるが、その成長の大部分は、日本と韓国、それにきびすを授した中国と台湾によって占められるものとされている。次ぎの10年間だけを見ても少なくとも1,600億ドルの資本投下が計画される。

一方、アメリカでは原子力発電が削減されるものと見られる。即ち、エネルギー省は、

 

 

 

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