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同国の原子力発電能力を現在より10%削減することを期待している。エネルギーの需要が次第にひっ迫するにつれて、アジアでは多くの問題が発生することが予想される。この地域の多くのエネルギー生産者によって好まれる長期的なアプローチは、発電を続けながら、殆どの核兵器の原料であるプルトニゥムを大量に生産する、いわゆる完全核燃料サイクル計画である。日本は、この種の積極的な計画をすでに有しており、中国と韓国も同様の計画を検討中である。そのような計画は、もし十分な管理が行わなければ、核拡散とテロリズムの危険性を増大させるものであることは明白である。北朝鮮のエネルギー不足と核に対する野心は良く知られているところである。北朝鮮政府が1994年10月アメリカと締結した同国の核計画を凍結し、逐次転換するという原子力協定は、もし実施されれば、最終的には北朝鮮が大規模な軍事的核能力を開発する危険性を解消することとなろう。しかし、この協定が締結されてもあいまいさは依然として十分に次の10年間は残り、北朝鮮はその交渉を引き延ばすことで政治的そしておそらく経済的利益を得ることとなろう。

もし、朝鮮半島が統一されれば、韓国がプルトニウムを産み出す完全な核燃料サイクル計画を渇望すると同じく、特に北においては、エネルギー需要が急速に加速されるものと見られる。それは、またいろいろな面で補完的である北と南の核開発計画をまとめ、おそらく民間用と実に精巧な軍事核能力の開発を促進することとなろう。

中国大陸において、小平等が戦争の原因となることを示唆していることもあって、台湾が公然と核開発に踏切ることはありそうにない。しかし、台湾が核研究軍事計画を再開することで核のスレッシュホールドに静かに近づくことは十分にあり得る。台湾には北朝鮮と同様、自国の核についての意図をある程度不明確のままにしておくだけの十分な理由がある。エネルギーの安全保障を装えば、燃料サイクル計画で、これを確実なものとすることができる。北東アジアに広がる核の不確実性の深まりは、特に日本にとって重要な関連性がある。この影の超大国は、もし技術上の問題だけならば、数か月の間に容易に核武装が可能である。もし、この地域での核のあつれきが激化し、日本の安全保障に対するアメリカのコミットメントがあいまいになった場合(起こりそうにないものの)、日本の核武装のような重大な動きは、激動が予想される21世紀の最初の10年間において予想できないことではない。

 

 

 

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