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この論文は、「Foreign Affairs」誌(1996年3月号:通巻第75-2)に掲載された「アジアの枯渇燃料倉」の翻訳です

 

アジアと中東を結ぶ脆弱なシーレーン

アジアの燃料枯渇と中東への依存:予想される緊張

 

ケント・カルダー(現在日米国大使館)

 

立ちすくみの現状

オイルショクの影響が薄れはじめて以来15年近く、エネルギーは国際政治の問題としては、かなり低い優先順位しか与えられていなかった。現在、この問題を再評価すべき時機が来ており、太平洋ほど、これが緊要な問題である地域は他にない。東アジアのエネルギーパターンの大きな変化は、長期にわたって過去をひきずる環太平洋の関係を悪化させる危険性とその機会を生み出しつつある。アジアの深刻化するエネルギー問題は、経済と安全保障との間にあった従来の境界を微妙に行き来している。

これらの問題は、1990年以来、東欧など、多くの市場での需要が一時的に崩壊したため、余り表面に現れることはなかった。しかし、はっきり見えないからといって危険が少ないわけではない。

今後10年間は(もしアジアにおける楽天的な経済成長が続けば、続きそうであるが)供給をめぐって競争相手がより多様化し、競合するようになる一方で、地域の石油市場での一層の切り詰めが推められれば、アジアの諸国の間に厳しい緊張を引起こす可能性がある。中国、日本、両朝鮮及び殆んどのASEAN諸国のエネルギー市場からの輸入は、最近まではるかに単純で緩やかなものであったが今後一層の拍車がかかることとなろう。北東アジアの石油輸入業者にとって、供給ルートの変更は、アジアと中東とを結ぶ脆弱なシーレーンに沿った「地政学」的な敵対関係に火が点くことがあるかも知れない。各国は、すでに石油や天然ガスの埋蔵量が大きいと考えられる沿岸海域において、相手国との相容れない主張をめぐって争いを始めるまでになっている。事実、見通しうる将来、いずれもアジアにとって安心できない矛盾となっている。

豊富な石炭をこれ以上使用することは、炭鉱の掘り尽くしや酸性雨その他の環境問題を招来する。原子力発電の急速な拡大は、核拡散の亡霊と同じく、安全上の懸念を大きくしている。石油への依存を続けることは、東アジアと中東とが結託する必要性を強め、次の世代にわたって、西側の優勢が支配する世界秩序に対する抜本的な挑戦となり得る。

 

 

 

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