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かも時代錯誤であるにも関らず、他国領海での違法操業や深刻な乱獲は最近までは稀であった。同地域に主要な漁業国家が複数存在することを考えると、これは驚くべきことである。しかし、これはこの地域の諸国家が保全と管理を意識してきた結果というよりも、むしろ紛争を回避しようと裁量的に行動してきた結果だと言える。過去数十年の沿岸諸国間の異常で緊迫した政治関係からして、これらの国家が大規模な紛争に発展しやすい係争を回避したかったということは理解できる。しかし、沿岸諸国間の関係改善に伴い、同地域の海洋での外国船による乱獲などのケースが増加してきたことは、逆説的というよりも、むしろ理解できることだと言えよう。

 

既存の漁業レジームと新しい諸問題

 

現在の北東アジア漁業レジームの主要な要素は、1965年韓日漁業条約と1975年中日漁業協定である。韓日漁業協定の主な特徴は、第一に沿岸の排他的12海里漁業水域を相互に採択し、韓国の排他的水域に隣接する合同管理水域を設置することである。合同管理水域の管轄は半分ずつとし、最大で年間150,000トン(プラスマイナス10パーセント)の漁獲量を相互の指定する主要な漁業種に対して認めなければならない。

合同管理水域での執行措置に関しては、旗国主義の原則が適用される。したがって、他国が同条約に違反した場合でも、沿岸国の寄港・拿捕権は拒否される。しかし、同条約にはユニークな特徴がいくつかあり、当時の政治的、経済的、法的状況が反映されていた。それゆえ、同条約の想定していた諸前提はもはや適正さを失い、その妥当性は深刻なまでに疑問視されたわけである。例えば、同条約は実質的に日本の漁業を規制するものであったが、それは日本の漁業能力の卓越性には疑問の余地がなかったからである。

しかし、1970年以降、韓国の漁船が北海道付近に現れ始めたにもかかわらず、同条約ではそれを規制することはできず、日韓の漁師たちは競争状態に陥った。韓国漁船が益々頻繁に出現するようになったため、日本の排他的漁区での韓国およびロシア漁船に対する執行措置を求める声が高まったのである。1980年以降、日本と韓国は衝突を回避すべく相互の水域での漁業を自粛してきたのである。しかし、ここ数年間、韓国漁船によってこの自主規制策が破られているという報告が増加したため、日本はこの問題に効果的に対処することを検討しているということだ。

中日漁業協定は、中国領海内とされている水域での日本の漁業を規制することを目的としている点で、韓日漁業協定に類似している。この協定はモータートローリングの禁止水域を設けており、そこでは600馬力以上のモーター漁船の航行が禁止されている。また、同協定はいくつかの保存地区を設け、季節と漁船数に応じて漁業を規制している。このように、中日関係は1975年の漁業協定の下での話し合いによって主に規制されているのである。しかし、中国は長年沿岸漁業国であり、自国の食糧および輸出需要に対応するために、1980年半ばから沖合および遠洋漁業を拡大してきた。このため、東海(日本海)および日本の西に位置する太平洋地域で多数の日本人と中国人の漁師が同一の資源をめぐって競争しており、しばしばお互いに損害を与えあっている。日本政府は中国政府に対し、特に日本の地引き網漁禁止水域である日本沿岸で中国漁業を制限する効果的な措置をとるよう強く要請しているということである。

 

 

 

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