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北東アジアの潜在的紛争要因としての天然資源

漁業レジームの紛争と石油をめぐる紛争

白珍鉱(韓国外務部)

 

本章はアジア太平洋地域の海洋生物・非生物資源の利用に関する諸問題を扱う二部構成シリーズの第一部に当たる。本稿では、北東アジア地域の海洋資源利用に関連する、既存のおよび潜在的な紛争について検討する。東南アジア地域にも類似した紛争があるが、それらについては将来別稿で扱うことにする。本章は二部構成である。第一部では、北東アジアの生物資源利用をめぐる、既存のおよび潜在的な紛争を検討する。第二部では、同地域の非生物資源利用をめぐる紛争について検討する。

 

生物資源をめぐる紛争

 

背景

 

北東アジアの現在の漁業レジームは断片化しており、時代錯誤であると言っても過言ではないだろう。この分野の国際法は革命的な変革を遂げたが、黄海・東シナ海の漁業の大半は、東海(日本海)と同様に、国連海洋法条約以前の諸条約の規制を受けている。例えば、調印されて40年近くにもなる1965年魚漁協定は、韓日間ではいまだに効力を有し、朝鮮半島南部周辺の漁業活動を規制している。1975年の漁業協定は、1955年の非政府間協定に代わるものであるが、中国とその対岸の中間に位置する周辺地域の西側で効力を有している。これら二つの協定は、漁業権をめぐる長く苦い係争の結果締結されたものである。中国と北朝鮮の間には、黄海に関して二つの漁業協定があると思われる。

 

これらの協定には多数の限界がある。例えば、これらの協定が全ての沿岸に適用されるわけではなく、全ての国家に適用されるわけではない。さらに、政府間か非政府間であるかを問わず、韓国や中国のような重要な沿岸国家の間に漁業協定は皆無である。このため、特に黄海/東シナ海などの同地域の半閉鎖海の生物資源の保全・管理の努力は、沿岸国および漁業国全ての協力を必要とするものの、うまくいっていないのが現状である。さらに、多くの場合、こうした枠組みは、特に船の数、漁業季節の期間、設備の規模の制限によって漁獲量の分配を管理するためのものに過ぎない。利害を持つ者の間で管理や漁獲量分配を検討する一般的な話し合いの場は存在しないのである。既存の二国間漁業委員会は、意思決定とその根拠となるデータの公開さえ行わないのである。こうした漁業レジームが不十分で、断片的で、し

 

 

 

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