しかし、この点について最も深刻な問題の一つは、黄海の韓国沿岸で操業する中国漁船によって引き起こされるものである。
韓国国立漁業局(NFA)によると、1993年には1,302隻の中国漁船が韓国領海あるいは韓国の漁業資源保護水域を侵犯し、緊急避難と称して韓国に寄港した中国漁船は7,779隻に上ったということである。適切な措置が講じられない限り、こうした漁船の数は増加し続けるであろう。こうした状況は、北朝鮮沖の五島列島(黄海)周辺の軍事的に微妙な地域での中国の操業のために、最近さらに悪化した。韓国政府はこの地域では北朝鮮との紛争の恐れから自国漁船の操業さえ制限しているのである。
他方、1992年、NFAは東海と黄海の韓国の漁業の場を拡大するために、漁船の安全操業に対する規制を修正した。その結果、黄海の漁業制限ラインは西に平均48キロ移動することとなった。このため、黄海には72,000平方キロメートルの漁場が生まれ、これは現在中日漁業協定の範囲とほとんど重なる結果となっている。
この問題の浮上してきた文脈は、同問題が韓国沖付近での中国の強硬な操業の近年の増加によって拍車がかけられてきたという点で、本質的に中日間の問題と類似している。しかし、韓国は現在まで、1975年漁業協定の枠組を尊重してきた。両国は漁業協定締結の交渉を始めたが、それはほとんど進展していないのが現状である。しかし、韓国沖、特に保護水域や特別制限水域での中国漁船の操業の増加に伴い、韓国政府が対策を考慮する可能性がある。
新たな漁業秩序の模索
こうした事態の展開は、既存の枠組みの妥当性を検討し、同地域の漁業の代替的な枠組みを模索する必要性を強く示唆するものである。しかし、この検討に入る前に、同地域の漁業の新たな規制の方策の必要性を提唱する議論について、2つ観点から一般的な考察を行いたい。
第一に、同地域の半閉鎖海、特に黄海/東シナ海には浅くて肥沃な漁場がある。この好条件が乱獲と低い生産性の原因であった。1960年の半ばまでには、殆ど全ての主要な魚種が乱獲されるに至った。魚種減少を最も象徴的、かつ明白に示すものは、キグチの減少である。グチ類などの商業価値の高い魚種の過去3年間の生産カーブの低下は顕著である。現状を魚種減少として特徴付けることは必ずしも確定的ではないが、これらの地域の漁業資源の状況が、現在非常に危機的であることは一般的には認識されていない。漁業資源減少に伴い、沿岸諸国の海洋管理問題の本質に対する認識は益々高まっている。網目のように張りめぐらされている既存の二国間の枠組み、および一方的な規制は効果的な管理の必要条件を著しく欠いている。同地域の海洋での効果的な漁業資源の保全・管理を確保するために、漁業国は何らかの枠組みを模索する緊要な必要に迫られていると言えよう。