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論文は琉球列島については次のような問題を指摘している。第1点は琉球列島がその大きさや人口から言って、排他的経済水域や大陸棚を主張することには議論の余地はないが、中国と日本の境界線を画定する上での取扱いは難しいというのである。これには当然日本側からの反論が必要であろう。論文によると、日本は、琉球が九州から長く伸びた岬のように取り扱うことを要求するであろうが、これには中国は不服であるという。琉球列島と中国大陸が同等の立場で認められて境界線を画定することは、不釣り合いである中国は主張するのであろうとのべているが、これについて、日本は必要な反論を成すべきであろう。

 

島に関する資格付与の問題

論文は、さらに島の問題に言及する。島に関する資格付与の問題である。島といってもさまざまであるから、すべての島が対等に排他的経済水域や大陸棚を発生させるものではないというのが主流の考え方であるという。つまり島についてはケースバイケースであるというのである。その結果、具体的にはひとつひとつの島が個別のケースとして扱われるという極めて困難な問題が生じる。

島が境界線上にある場合には問題はさらに困難となる。これが竹島(独島)や尖閣列島(釣魚列島)のケースである。この場合は島の位置、大きさ、政治状況、人口などの要因で島に効力が与えられるか否かの議論がなされるべきであると筆者は主張するが、具体的な判断はどうかと聞かれると、判断は困難であると筆者は述べている。なぜなら、それらの島が排他的経済水域や大陸棚を発生させるために、海上の境界線が政治的な境界として確認される必要があるる。このようなケースの場合、筆者は3つのアプローチがあるが、いずれも決定的ではないとしている。

第1は領土問題と海底の争いを不可分と見るアプローチである。これでは問題の解決には資するところがないと筆者は論じている。第2は、境界線と領土問題を切り離すアプローチである。このやりかたは係争中の島が大陸棚を発生させない場合は有効かもしれないが、それ以外の場合には島の効力を推測することが困難であると言う。第3のアプローチは係争中の島を、たとえば一時的に中国あるいは日本のいずれかに帰属すると仮定し、その上で選択肢の分析を行うというものである。これは合理的なアプローチではあるが、島の効力に関するファクターが脱落するという弱点があるという。

具体的には尖閣列島はかつて人間が居住し真水もあることから、島が排他的経済水域や大陸棚を発生させることは否定できないだろう。一方、竹島の場合はその自体の排他的経済水域や大陸棚を発生しないと思われると筆者は述べている。

 

地殻形態学的/地質学的考察

論文は次に地殻形態学的/地質学的考察に移る。それによると、東シナ海においては、日本が、日本の自然の延長部分が終わると申し立ててきた沖縄トラフの存在が大きな考慮事項となっているという。この点は、1970年代から大陸棚の画定のための規定が実質的に改訂されてきた歴史があるので、新しい大陸棚の定義に基づいて行われべきであるからだと言うのである。おそらくこの点に関しては日本側の反論が求められよう。

 

結論

 

 

 

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