う。現在韓国の海軍は、大陸的海軍力の基本水準装備に留まっているが、徐々に潜水艦や、駆逐艦などを装備していくことで、少なくとも海洋的海軍と大陸的海軍の任務をバランス良く構築することのできる海軍装備体系を確保するために、努力をしなければならないだろう。そうすることにより韓国海軍は、北朝鮮海軍の活動を制約するという意味での海洋拒否(Sea Denial)と韓国の海運の最低限の安全を保障するという意味での海洋統制(Sea Control)の役割の一端を担うことができるであろう。特に今日の海軍は、陸上戦に直接動員され影響を与え得る能力(sea based force to thrust power ashore)を保有しているのであり、海軍力の増加は陸軍軍事力又は陸軍の戦闘力の弱化を招くと認識するべきではない。このような能力は20世紀中盤以降の軍事技術の発達により可能になったのであり、特に海軍は、地上軍に対する爆撃任務を効果的に担うことができるであろう。74
最近韓国の海軍が潜水艦を装備しはじめたということは、主に中型高速艇(PKM)と小型戦闘艦(PCC)という、大陸的海軍の水上戦力分野のみを装備している韓国海軍に、水中戦力分野を加わったことであり、望ましいことだといえよう。だがこのような沿岸防衛水準の大陸的海軍力から脱するためには、最低限局地統制(Local Control)海上交通道保護などの基礎的任務を達成するためのより強い海軍力(たとえば駆逐艦、護衛艦、大型高速艇、潜水艦が含まれる)を確保するために努力しなければならないであろう。
?Z.結論
全地球的次元では、冷戦が解消され、米ソ両超大国間の全面核戦争の可能性は弱まり、もはやイデオロギー対立のない世界になった。だが、没落した東欧ヨーロッパ及び旧ソ連地域では、冷戦当時は抑えこまれてていた不満が、異なる民族や宗教団体の間で、いっぺんに噴出、爆発するという現象が起きている。アルメニア、アゼルバイジャンなど旧ソ連の共和国、そしてユーゴスラビアで昨今引き起こされている政治状況は、ヨーロッパでいわゆる新国際秩序が何を意味するのかが、悲観的な姿で表れている。米ソ間、そしてかつてヨーロッパ地域でおこった変化とは異なり、東アジア地域における冷戦の解消は、かなり緩やかな様相を見せている。冷戦体制の崩壊は、東欧及びソ連に存在していた社会主義陣営の没落を意味するものだったが、今やいくつにもならない社会主義国家のほとんどは、まだこの地域に存在しているのである。中国の社会主義的な残滓が残っており、ベトナムがあり、また最後まで自分の体制守護を叫び、これを守るためには手段と方法を選ばない北朝鮮政権は、核兵器開発で世界を脅かし国際社会をさすらう身になっている。
その結果、朝鮮半島の対立構造は未だに冷戦時代の姿をほとんどそのまま留めている状況である。北朝鮮との対決は、いまでもイデオロギー的性格を保ち続けている。だが同時に、朝鮮半島周辺の戦略状況は急激に変化している。かつては冷戦の一方の軸でっあたソ連の崩壊は、東アジアのパワーバランスにも変化を呼び起こしており、冷戦の解消とともに、米国のこの地域に対する軍事戦略的利害関係も、冷戦時代とは異なるものになった。米・ソ連軍の勢力が相対的に縮小し始めたこの地域に、新しい地域強大国が徐々に登場しているのである。
中国と日本は既に軍事的、経済的面で強大国だったが、冷戦解消以後ヨーロッパの強大国及び米国、ソ連は軍事費を削減し軍備を縮小している一方で、むしろこの二国は国防費
74 Eric Grove, The Future of Sea Power (London : Routledge, 1990), p.6.