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見える。日本は昨年夏に第二次大戦敗戦後、初めて陸上自衛隊をカンボジア平和維持軍の名目で海外派遣した。昨年1月末、渡辺外相は、海外に派遣された自衛隊が軍事的役割を遂行できるよう法律を改正しなければならないという意思を表明したところであり、人道的な派兵の場合、国連の要請と関係なく、自衛隊の兵力を海外に派遣できるようにする内容の法律改正に着手した。日本はまた、国連の安全保障理事会の常任理事国候補にも挙がっており、強大な経済力が次第に政治力、軍事力に変貌していることがさまざまな側面で感じられる。

 

2.日本の陸上および航空自衛隊

 

それならば、果たして日本の実質的な軍事力はどの程度に達しているのだろうか。具体的な資料と合わせて、自衛隊の実際の戦力を見てみることにする。まず防衛費を見てみよう。1992年現在、日本の自衛隊は軍事費の側面から見ると、世界第三位の強大な軍隊である。英国の国際戦略研究所は(IISS)の資料(The Military Balance 1992‐1993)によれば、1992年度の日本の軍事費は343億ドルで、米国の2,826億ドル、旧ソ連の1,288億ドル(1990)、英国の412億ドル、フランスの349億ドルに続き、世界で5位になっている。英国、フランスの国防予算には、退役軍人に支給される年金が含まれているが、日本の場合はそうではないため、日本の軍事費は実質的には世界第三位といえる。このように、既に世界3位に及ぶ日本の軍事費は、自衛隊の質的水準を物語る指標になっている。1992年の日本の防衛費は、前年比3.8%増で、防衛費の増額比率が初めて鈍化した。32正規の軍隊でもない日本の自衛隊が使う防衛費は、世界的な強軍であることを誇る韓国軍の国防費の約3倍にも達している。

日本の自衛隊は、定員のある軍隊である。1954年に日本の陸上自衛隊の定員が18万人と決められて以来、今まで一人の増員もなく、人員不足現象が続いている。海上自衛隊と航空自衛隊も同様である。日本の自衛隊の定員は273,801名で、1992年3月31日現在、自衛隊の兵力は定員の12.2%に満たない240,266名である。33

人口が1億2000万を超え、GDPが3兆3,600億ドルに及ぶ大国の軍事力としては、どうということのない軍事力である。特に日本が構想した25万人という自衛隊兵力は、周辺国の軍事力約500万に対応するため34だったという事実を考えてみればよい。だが日本の自衛隊の総兵力数が意味するところをより深く理解するは、自衛隊の兵力構想を考えてみなければならない。日本の自衛隊は、まるでイスラエルがアラブ諸国の軍隊に対

 

32 SIPRI, SIPRI Yearbook 1992 : World Armament and Disarmament ( London : Oxford University Press, 1992 ), pp.242-243.

33「平成4年版防衛白書」,P.324.

34 李度 ”日本の軍事力と戦略方向”,p.7.

 

 

 

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