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して今後も有効であると思われる。彼はソ連海軍の役割を、特定の概念と枠にはめ込むことなく、平時にも戦時にも活躍し得る統合海軍を養成しなければならないし、またバランスのとれた海軍の発展を推進する必要があると強調した。22

 

4.ロシアの太平洋艦隊

 

ロシア太平洋艦隊を含む海軍は、予算削減、兵力減少、訓練時間・規模の縮小、そして新軍艦の建設の中断等で相当困難な状態に直面している。ソ連海軍を引き継いだCISとロシアの間には、北海艦隊、バルチック艦隊、黒海艦隊、そして太平洋艦隊の統制を巡り、摩擦が少なくなく、バルチック艦隊と黒海艦隊をCISの共同軍事委員会がいったん統制することで合意しているが、ウクライナとグルジア共和国は独立海軍の運営を望んでいる。不透明なCIS次元の軍事政策では、正確な見通しを立てるのは困難である。これと共にロシア海軍が全般的に縮小している過程で、海軍の行方を正確に究明することはできないが、1992年に地中海、湾岸、そしてインド洋にロシアの軍艦が配置されなかったという点を勘案すれば、経済的条件によるロシア海軍の活動範囲の縮小は当分続くと考えられる。

より具体的に見ると、1990-1991年の間に、旧ソ連海軍はクズネスフ提督号航空母艦が任務に就き、ウクライナでも同じレベルの(バロヤーグ)空港母艦を建設している。23

これと共にキロフ級のユリアンドロホフ巡洋艦、ウダロフ級の駆逐艦、ニユスタルシマ級の護衛艦等、新しい水上戦闘艦を計画、建設中であるが、1992年から一部中断されており、130種類の建設計画も現在中断されている。また、キエフ航空母艦も太平洋艦隊での活動を中断し、潜水鑑の場合は、オスカー級SSGNが使われ、かわりにエコ級とビクター級SSNはその役を退いた。24

1991年から1992年までの旧ソ連の海軍兵力は、総450,000名から320,000名に減ったが、1992年6月現在のロシア海軍の軍事力は「表4」の通りである。

 

22 Bryan ranft and Geoffrey Till, The Sea in Soviet Strategy, sec. ed, (London: MacMillan, 1989), p.235.

23 Military Forces in Transition 1991, p.54-55.バルヤーク航空母艦は、これまで中国海軍に売却されるとの報道が多くなされたが、ウクライナ共和国も中国と合意したことが伝えられている。だが、最近中国当局は、このような空港母艦を購入した場合、補助艦と海軍航空隊等の追加購入が不可避なため、いったん棚上げにしたと報道されている。

24 The Military Balance, 1992-1993 (London: International Institute of Strategic Studies, 1992), p.91.

 

 

 

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