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今後の旧ソ連軍の立場と役割を見通すには、このような複合的な国内変化を抜きには分析が不可能である。少なくとも1990年代末までの旧ソ連軍の立場は、ロシアとその他の共和国の内紛や経済的対立、武力衝突まで想定することができ、共和国間の摩擦が深まり、ロシア内の保守派、穏健派の競争の影響を受け続けるであろうことは自明の事実である。

したがって韓国を含む周辺国家の主な課題として、旧ソ連内部の対立構造の中での旧ソ連軍の役割と戦略を把握しなければならない。これと共にボリス・エリツィン・ロシア大統領の不確実な政治生命を念頭に置いて、旧ソ連軍の主要脅威評価(net assessment)作業が今後どのように展開(現在はっきり把握することはできないが)するのか、少なくとも次のような変数を考慮すべきであろう。17第一に、旧ソ連軍はCISの下に設置された共通軍事作戦企画部との関係を構築するのに、相当時間がかかることと思われ、特に旧ソ連軍の政治局所属にあった軍事委員会と類似した役割を遂行することのできる各種の統制体制が急がれる。第二に、国内事情の変化として旧ソ連軍は新しい軍事作戦、教理、そして関連する政策指針を速やかに開発し、実践する必要がある。第三に、核兵器とその他の武器体系を統制するためのCISレベルの新しい統制体制を設立する必要がある。第四に、国内経済環境の変化と共和国間の今後の経済交流と協力関係は、旧ソ連軍の発展に影響を及ばす核心になると思われるだけに、CISの経済回復がとても重要な変数となっている。そして第五に、旧ソ連軍の新しい役割を再証明する際の必要条件は、新しい安保観と対外政策の指針であり、CISの隣接国家に対する政策も再構築する必要がある。18

 

2.国防予算削減とロシア軍部

 

16ロシアはマレーシアを含むアジア諸国の軍事力強化を望んでおり、マレーシアにMig-29戦闘機を販売する計画を立てているが、米国の圧力などで現在まで実行に移されてはいないが、中長期的にアジア太平洋地域で武器販売を活発にする可能性は十分にある。

Michael Vatikiotis, 'Scrambled Jets,' Far Eastern Economic, Review, vol.156, 7, February, 13, 1993, pp.10-11 参照。

17旧ソ連軍司令部は、1991年12月のソ連連邦の解体直前に、ソ連軍の新しい教理と軍事力構造についての包括的な研究に着手し、この中で湾岸戦争以後の教訓を中心にソ連軍の戦略と、特に今後の米ソの軍事関係及び協力の可能性を模索し始めている。Mary Fitzgerald, 'The Evolving Post-Soviet Military Doctrine, 'International Defense Review, vol. 25, may 1992, p.401.

18 Col. A. F, Klimenko, 'On the Role and Place of Military Doctrinein the Common wealty of Independent States Security System, Voennaya Mysl, no.2, 1992, pp.11-12.

 

 

 

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