考えられる。第一に、米国で進行中の全般的な軍再編作業よりも一層難しく複雑な再編過程がうまく運ぶか。第二に、冷戦時の戦略核兵器、ヨーロッパと中国を中心とした大規模の在来戦略、そして外洋型海軍力を中心に養成してきたソ連軍において、現代戦のハイテク化と、緊急配置戦力の威力を見せた湾岸戦争の教訓などを土台に、限られた予算内で行われている旧ソ連軍の全般的な構造改編作業の時期とその成否。そして第三に、大西洋でウラル山脈は(ATTU)からソ連極東地域まで活動していた旧ソ連軍の作戦範囲も、またかなりの部分再構成しなければならないということがある。
すべての面で米軍と対立したソ連軍の威力は、冷戦当時は脅威の代表格とみなされていたが、ソ連の没落以後、ロシアを中心に形成されたCISと、そこに属する共和国がそれぞれ異なる軍事政策により、旧ソ連軍の統制が事実上不可能になった状況の中で、むしろ分散した旧ソ連軍が、重大な脅威として登場しているためである。14
このような状況の変化を明確に立証する端的な例として、旧ソ連軍の見境のない兵器拡散を挙げることができる。実際に、冷戦期には主要敵国と認識されていた中国にまで、盛んに武器販売を行っている。15旧ソ連軍の基本骨格は、ロシア共和国に受け継がれているとの見方が可能だが、ソ連邦の解体とともに戦略および戦術核兵器は、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、そしてロシア共和国に分散している。ソ連軍の部分的縮小化とともに、旧ソ連軍の生活条件も悪化した。それだけでなく、旧ソ連の代表的な産業として常に発展を遂げてきた防衛産業も、予算不足と事実上分散した中央政府の統制によりばらばらに兵器開発計画と、(現在より重要な問題として浮上している)兵器販売政策に着手している。16
14このような懸念は、ソ連邦の解体前後に西側の役人と専門家達から指摘されてきた。イレロ ロバート ゲイトス元中央政府局長は1991年12月、ソ連邦が解体されCIS設立後,果たして旧ソ連軍をCISが統制することが可能か否か、公式に疑問を呈したことがある。Financial Times, 1992.12.11. その後、エルツィンロシア大統領がソ連の解体以後、CISとは別にロシア独自の軍隊を創設すると確約したところ、CIS共和国もそれぞれ独立した軍隊を維持するとの方針を明言し、結局のCISレベルの軍隊は無意味になった。Financial Times, 1992.3.17.
15例えば中国とロシアは、ソ連の解体以後、武器移転関係が活発になっており、中国は既にロシアからMig‐29機、爆撃機、SA300、そして戦術核兵器及びミサイル技術の移転を受けたことが伝えられている。 Tai Ming Cheung, 'Arm in Arm,', Far Eastern Economic Review, vol.155. no.45, November 12, 1992, p.28. 駐韓大使及び駐中大使、そしてブッシュ政権で国務省国際安保担当次官補を歴任したリリー大使は、最近米国は中国に対する武器販売に関する懸念を、様々なルートを通じてロシアに通告したと指摘し、旧ソ連は、現在外貨が極端に足している状態にあるため、武器販売を通じての外貨購入に力を入れていると述べた。1993年1月23日、ワシントン国務省での筆者との面談で明らかにした内容である。