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このような統同軍事力を維持するためには、米軍の新しい軍事教理と訓練指針が準備されなければならないのはもちろんであり、結局のところ主要友好国との統同作戦の再構築が必要であろう。もちろん統同軍事力を具体的に形成するためには、相当の時間がかかるだろうが、既に統同戦力の当為性を米国防総省が認識しており、1992年8月のアジア太平洋戦略報告書にもこのような目標が設定されている。朝鮮半島を含む米太平洋司令部所属の軍事力は、戦陣配置軍事力と危機対応軍事力に分類されており、少なくとも1995年の中盤までにはハワイ、アラスカ、そして米国本土に配置された危機対応軍事力(1陸軍師団、1飛行団、5 carrier battle groups、そして水陸用軍事力)の配置を計画している。13

結論的に、米海軍の基本的な役割と任務は、冷戦時のものとは異なることと予想される。最も明らかな変化は、継続的な予算の削減と、戦略環境の変化により積極的な軍事的介入が困難になった状況下で、アジアの新たな軍事大国として浮上している中国と日本の軍事力とそのバランスの維持であろう。冷戦の終焉と共に、米中間の戦略的協力関係も本質的に弱まっており、またソ連の脅威の消滅で日米安保関係が変化していることからして、アジアでの米軍の役割は漸進的に縮小されると思われる。中国がますます力を持つようになり、また日本の自衛隊が全般的に近代化を進めていることを勘案すると、米国もまた東アジアからの短期的な撤収を考慮する状況にはない。問題は米国内の安保合意(特に議会の見方と見解)が急速に変化している状況下で、唯一の超大国としての立場を得た米国が、超大国に見合う役割を十分に担える軍事力を維持できるかが重要であり、中長期的には、アジア内で新たな超大国になった中国との戦略的競争を、いかなる方法で進めていくのかが注目される。

 

?V.ロシア海軍の変化と今後の役割

 

1.ソ連崩壊後のロシアの軍事と現状

 

1991年12月ソ連邦の解体と独立国家共同体(以下CIS)の誕生は、旧ソ連軍に画期的な影響を及ぼしたのはもちろん、第二次世界大戦と冷戦時に発展し続けたソ連軍の役割と任務の本質的な変化を不可避とした。政治的な大変革の中で、旧ソ連軍がロシア軍を中心としてどのような方向に転換するのか、ロシアとCISの政治、経済が中長期的にどう発展していくのかは現在不透明であるが、次のような変数によって決まるのではないかと

 

13 U.S. Department of Defense, A Strategic Framework for the Asian Pacific Rim :Report to Congress 1992 (Washington, D.C.: Government Printing Office, 1992), p.17.

 

 

 

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