4.合同軍事力と米海軍の役割
「表2」にある前線配置モデルの中のどのタイプが1990年代末までに選択されるのかは不透明であるが、少なくとも冷戦時に維持されていた、A型に近い水準の米軍駐屯は不可能であり、またF型の急進的な撤収も想定し難い。従って短期的には冷戦時よりは低い規模の軍事力を軸にしたC型の接近基本軍事力と、冷戦時に維持していた軍事力に比べ35%削減のE型(低予算の軍事力)モデルが採択される可能性が高いといえる。これと関連して米海軍は、伝統的に主要管理対象国だった大西洋と太平洋を中心に軍事力を配置するであろうが、限られた予算で不透明な安保環境に対応しなければならないため統合軍(integrated forces)概念を導入しつつ、統同作戦(joint operation)と統同軍事力(Joint Force Packages)の方向に発展すると考えられる。
統合軍の基本趣旨は冷戦以前にも強調されてはいたが、基本軍事力の概念が具体的になったことで米国の軍事戦略は、ハイテク武器体系及びすぐに移動できるこれまでの軍事力を基盤に形成される方向にある。現在理論的に計画されている統同軍事力の主眼点は、陸、空、海軍の通常軍事力をNaval Battle Group、陸軍師団、空軍飛行団、そして海兵隊expeditionary brigadeを軸に活用する方針を立ていることである。統同軍事力の基本的な骨格は、各軍の伝統的な形態と任務を維持するかわりに、限られた予算で最大限の力を発揮することのできる体制を整えようとするところにに意義がある。したがって特定地域(例えばヨーロッパや東アジア)の特殊性に見合った統同軍事力を配置するようになっており、米海軍の場合、ヨーロッパと太平洋のそれぞれ6つのBattle Groupを戦陣に配置し、各Battle Groupは軍艦17-20隻、海軍兵力30,000名、海兵隊4,000名、戦術航空機60機、そしてヘリ機40機を保有するとの見通しである。12
12 Adm. Paul David Miller, Commander-in-Chief U.S. Atlantic Command, Both Swords and Plowshares: Military Role in the 1990s (Washington, D.C.: Department of the Navy, November 1992), pp.29-30.