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によれば、東アジアの兵器市場はかなり大きく--年間67億ドル、あるいは世界の兵器取引量の約20-25パーセントである。日本、台湾、韓国そして一部のASEAN諸国は、将来、更に多くを輸入しそうである。中国もまた、将来、特にロシアからより大量に輸入するものと見られる。しかしながら、中国が必要とする小型兵器類は、地域内から供給可能と見られる。

この軍事力増強あるいは近代化計画は、この地域に対して多くの意味合いを持ち、それらは、第1、地域の軍拡競争を招く。強力な軍備管理機構が不在のため、競争はこの地域の安全保障を不安定化しかねない。

第2、多くの国々に、より向上した戦力投入能力を与えることになる。すでに導入済みの、そして将来導入されるシステム(戦略爆撃機、潜水艦、航空母艦)の多くは、戦力投入能力を強化しうる兵器である。この戦力投入能力が敵不在というシナリオにおいてどの程度地域の安全保障に影響を与えるかは依然として判らないが、この地域における隣接国どうしの未解決の多くの係争、特に海上における係争及び旧来の憎しみの遠因から見て、この傾向はこの地域の安全保障にとって非生産的なものとなろう。強化された戦力投入能力は、戦闘のシナリオでは望ましいものであっても、平和な環境下では、地域安全保障にとっては害にもなりうる。

第3、軍拡競争という枠組の関連、あるいはその逆で考えられる近代化計画は、この地域における戦闘の将来に影響を与えることになろう。米国を別にすれば軍事革命(RMA)に最大の影響を与えそうな国は日本である。この2国のみが通信(例えば衛星)及び情報処理技術の導入を通じて、戦争を変える新しい技術を使いこなすに近い位置にある。これら情報ベースの技術についてオウェンス大将は、システムのシステムがステルス(奇襲が戦いの原則)と精密攻撃による戦闘を可能とすることとなろうと述べている。この革命のいくつかの要素は、既に1991年の湾岸戦争及びボスニアにおいて有効に用いられている。

RMAの行方については、エコノミスト誌がそれは先制攻撃を助長し、戦闘は短期間でかつ敵に壊滅的な2次被害を与えるものになろうと指摘した以外、まだ明らかではない。しかし、RMAはまた米国に同盟のリーダーシップを与える新しい根拠を与えることになろう。もし、米国がかって同盟国、例えば日本に、核の傘によって保護を提供してきたのであれば、現在同じように、情報技術の傘による保護を与えることができる。

 

 

 

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