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る。

ロシアは、まだ転換政策の途中であり、その姿がはっきり見えないためにこの研究から除外した。しかし、軍事的にはロシアは核兵器を保有し、その兵力の大部分は大平洋方面に展開しているが、かっての冷戦時代世界が付合ったモスクワのような海洋大国とは言えない。軍の即応状態は劣悪で兵員の士気は低く、兵器の整備状態もまた低いことは公然の秘密となっている。

士気の低さと即応性の低さに関連して、私見であるが、ロシア軍が地域の安全保障に脅威を与えるような状況にはなりそうにない。事実、ロシアの既に伸びきった資源の状況を更に悪化させるようなこの地域の海洋の環境が不安定化することは、ロシアにとっても国益ではないであろう。

世界の多極化を是認する最近の中露両国の戦略的パートナーシップについては、その詳細が未入手のため、地域安全保障に対する関連性について適切な分析を行こなうことができないが、その過去の歴史を見ると、このパートナーシップは過渡的、一時的なもののようであり、その文鎮にも値しそうにないもののようである。しかし、中国政府の見方からすれば、その価値の有無は別として、ロシアを中立化することは重要である。中国は自国の国境周辺に非友好勢力を抱えることはできない。

 

○韓国

情勢が鎮静化していない現在、この地域の安全保障において韓国は明らかに重要な役割りを果たしている。北朝鮮政府には多くの不確実性が存在するにも拘らず、私の見方では平和的手段による統一朝鮮についての見通しは、今が過去のどの時機よりも明るい。

戦略的緊急性よりも経済力及び文化の力に動かされて、中国、ロシア及び日本との関係で綱渡りを続ける統一朝鮮は、少くとも2つの主な戦略上の選択肢を持っている。第1の選択肢は独力政策(do-it-alone)、例えば軍事力の強化である。この自給自足政策あるいは国家強化政策は、統一政策の衝撃を吸収するため、どこか別の場所で使われた方が良いであろう。ドイツにおける教訓が適用される。第2の選択肢は--主要国と国益を合致させること。即ち軍事同盟政策である。この2番目の選択肢で韓国は数枚のカードを切ることができる。第1のカードは自国の戦略的利益を中国に合致させることである。

このチャイナカードは、1910年朝鮮の植民地化を招いた不幸な過去の関係を再燃さ

 

 

 

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