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ば、同国は諸外国と交渉する上で強力な体制を持つこととなろう。換言すれば、東アジアが努力すべきことは中国と共通の立場を見出し、中国政府が、同国の国益を国際社会全体の利益と両立しうる方法で徐々に明確にするよう励ますことである。

このような枠組において、東アジアにおける予防外交(紛争の平和的解決法)の顕著な一例がある。

未解決の係争は時限爆弾として残り、当事国の政府間関係を複雑化させる。長年にわたる憎しみが依然として強い場合、小さな事件をめぐる言葉の上の争いが釣り合いを失って爆発し、またとるに足らない緊張が国際問題に発展するような糸口を与えうる。このシナリオがあるとすれば、多くの諸国が望むのは、勃興する中国に対する迅速かつ確固たる解決法であるとするバランス・オブ・パワーのアプローチは、おそらく我々が追求すべき最良の政策ではなさそうである。また、完全な宥和政策あるいは降伏主義はフィンランド化政策につながり、地域全体を危険に導くこととなろう。ある国の提案に便乗する政策は、それ自体中国の戦略的利益への無条件降伏につながることであるということは長年指摘されてきたところである。我々としては、これも避けなければならない。

東アジアにおける最良の選択は、中国をしてこの地域内のいかなるイニシアティブに対しても脅威を感じさせない方法で関わらせることである。中国は、また、孤立主義は弱点であり、同国の経済的繁栄は、万一同国が世界の主流をなす政策を無視するようなことがあれば国家の富が流れ出てくる蛇口をいつでも止めうる国際社会の寛容さの賜物であると信じているにちがいない。

世界は中国を悪魔と見なす政策を追求すべきではなく、一方、中国政府も子羊になる証拠を示すべきで、怒れる龍のような息づかいをしてはならない。

本論は、中国、日本及び米国に特に焦点を置いている。というのは、短い論文ではその他のアクターについての詳細な検討ができないからである。とは言っても、決してロシア、ASEAN、韓国及び台湾がこの地域内で果たす海洋の安全保障上の役割りを軽視するものではない。この地域の安全保障は、より総合的アプローチ--これら全てのプレーヤーが北東アジアの主要海洋諸国にも劣らない役割りを持つからである。これらの諸国は取るに足りない無視できるような勢力ではない。実際、この地域で紛争があるとすれば、おそらくASEAN(例えば南シナ海)、台湾あるいは朝鮮における動きに関連して発生するものと考えられる。更に、これらの諸国は、日米中の主要3か国プレーヤーと特別な経済関係にあり、その意味でこれら諸国は地域の安全保障機構において極めて重要であ

 

 

 

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