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とで米中関係は将来好転しそうである。米国の対中国政策は、一部は台湾問題、そして大部分は内政と選挙戦のスキャンダル暴露次第で定まる。もし米国が台湾との密接な関係を改めれば中国政府の敵意はより少なくなるであろう。この新しい政策によって、米台関係が断絶に至ることはないが、米国は台湾との政治関係の改善(格上げ)にはより慎重になるであろう。米国が台湾との経済関係を縮小する必要はない。一方、中国政府とは政治面での関係改善が期待される。台湾との高官の相互訪問は将来制限されるであろう。米国はまた、台湾の国連加盟や中国大陸からの独立に対する支援を期待されているわけではない。アジア太平洋にとって安定した日中関係のような米中関係が鍵である。経済的結びつきの拡大はやがて時を超えて、依然として抑制的な中国の政治システムの自由化を促進することになると主張する専門家もある。また、最近の歴史をふり返っても、米国を高くつく封じ込め戦略に追いやった中国の米国の国益に対する脅威というものは何も見当たらない。それにもかかわらず、米中関係には明確に敵対的であったかっての米ソ関係よりもより難しい経済、政治、軍事の各目的のバランスのとり方が必要であろうとする考え方では一致している。米国政府主導の中国包囲政策の結果、各国が米国の味方につくよう強制されることによって、この地域自体が不安定になりかねない。この地域にとって、どのような代価を払っても避けるべきことは、アジアの国同志が互いに戦うような舞台になることである。この地域が必要とするのは敵ではなく、味方である。即ちこの地域にはゲームのルールに従ってプレーする中国と友好的な日本と米国が必要なのである。

しかしながら、中国に熱中する米国の中に一つの不確実性がある。その制約は現在の日米安全保障関係と関係している。米中関係にある距離が置かれている限り、日本側が米国の対中宥和政策に怒りを表わしたり、嚇かされていると感じることはなさそうである。米国の新しい対中国政策が実際に日米関係を損なうか否か、その結果を予測するには、まだ早すぎるであろう。私自身は、そのようなことは起こらないと考えているが、日本政府が何らかの懸念を抱くことも考えられる。万一米中関係の緊密化がかえって日本の不安感をかきたてるようなことがあれば、日本政府が中国に対して無関心ではあり得ず、おそらく両国を戦争に追い込んだ不快な過去を再現することとなろう。もし、何らかの理由で日中間の戦争を避けるための措置がとられないとなると、それは将に21世紀の悲劇であろう。

安定した強力な海洋における安全保障体制の連係を作り上げるために、この地域にとって両大国が必要とされる時機に、この両大国は戦うべきでない。

 

 

 

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