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の黒字は増大した。大蔵省が1997年3月に公表した貿易収支によれば、全体の黒字は対前年比27パーセント減の8.183億円であったが、対米黒字は11パーセント増の3.798億円に達した。この現象は、ローレンス・サマーズ米財務長官をして、日本が輸出依存を減らし、内需拡大を推進しなければ日米間の貿易摩擦が深まるとの警告を発せしめることとなった。日本の米国に与える経済的な打撃から貿易戦争に発展することはなさそうである。日米間の貿易摩擦は周期的に発生しており、その原因は構造的なものであるため、摩擦が発生することは避けられず、解決は容易でない。

しかしながら、本論が直接目的とするところは、国際関係における日本の任務及び特に変化した世界的戦略のシナリオに日本がいかに対処するか、アジア太平洋において減少する米国の戦略上の利益及び独善的な中国にどのように対応するかということである。

統一朝鮮が中国との間に緊密な軍事関係を発展させるという決断をすれば、日本はいささか厄介な問題を突きつけられることとなろう。そして核兵器を保有する朝鮮は日本人の神経を逆なでし、間違いなく日本をして大量報復のオプションを採らせることとなろう。自衛隊が強力な兵力であることは、日本の防衛力整備について研究した人なら誰でも認めるところである。1996年の防衛白書は自衛隊の装備を次のとおり公表している。即ち、水上艦64隻、攻撃型潜水艦15隻、対潜ヘリコプター92機、F-15戦闘機154機、AWACS4機の他、地上配備の対ミサイル・システムのような戦域ミサイル防衛である。日本の海上自衛隊は英国海軍より大きい。現在殆どの研究者が、中国人民解放軍より自衛隊の方が装備が優れ、バランスがとれていることを認めるであろう。日本は、また強力な戦力投入能力を保有していないといっても、もし決断さえすれば、それを特に情報戦争の分野において、実現するだけの技術的強味と資金を持っている。

中国、韓国との関係における日本の不幸な歴史は、日本を受身に回らせている。日本の対中国問題は、尖閣諸島をめぐる領有権争いを解決するよりも、むしろ米国がこの地域から撤退した場合、アジア太平洋における安全保障を侵食しかねない中国の覇権をいかにして防ぐかにかかっている。日本は、中国の軍事力に対して米国抜きの独力でどのように対応すべきかが判っていない。これまでの約50年間、中国やソ連に対処してきたのは米国であり、日本は中国を心配することはなかった。安保条約が強固であり、最近、見直しが行こなわれたにもかかわらず、日本の懸念は、憲法の制約内で自国の集団的自衛能力をいかに強化するかという点である。

同時に、日本には中国に対処するため何か柔軟な方法が必要である。中国は、すでに日

 

 

 

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